「東京には出たくない」年収250万円でも地元から離れない理由

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地方出身者は、進学や就職のタイミングで、いわゆる「上京組」と「残留組」に分かれる。お盆や年末年始など年に1~2回、「上京組」や「残留組」が集まり、思い出話に花を咲かせるが、時折「あ、ちょっと感覚が違うな」と思ったことはないだろうか。

筆者は北海道出身で、大学進学で東京に出てきた「上京組」だ。私ごとだが、思春期は黒歴史。地元の閉鎖的な空気感が息苦しく、「大学デビューで人生をやり直したい」と本気で思っていたので、大学進学を機に上京してきた。地元に帰る選択はなかったが、「もし地元に帰っていたら、どんな生活をしていたんだろう」と思うことはある。

そこで、進学や就職で都会に出ず、地元に残り続けることを選んだ人たちに、地方での暮らしぶりや地元に残り続ける理由を聞いてみた。

「とくに東京に出たいと思わない」その理由は?

まず気になるのは、彼らが「東京に出たいと思ったことはないのか」ということである。もちろん、地元に残るのが悪いわけではないのだが、上京以外の選択肢がなかった筆者には、なぜ東京に出なかったのか、とても関心があるのだ。

「地元組」の人たちに聞いてみたところ、「若いころは憧れがあったが、いまは特に東京へ出たいと思わない」という意見が大多数だった。例えば、こんな意見があった。

「高校生のころは田舎がつまらなくて、嫌気がさしていたのは事実ですね。僕の地元は青森なので、家と職場のダブル雪かきが地獄なんですよ。でも、おいしいものがあるし、完成度の低い地元のお祭りも、歳をとるにつれて愛おしくなって。それから、最近はネットで何でもできちゃうから、不便を感じなくなってきたっていうのも大きいかもしれないです。ようやく近所にセブンイレブンもできたし(笑)」(青森県・30代男性・既婚)

このほか、「20代のころは憧れた時期もあったけど、いまは結婚して家を建てたり、子どもを育てる環境を考えたりすると、青森にいるほうが現実的かなとは思う」(青森県・30代女性・独身)と将来の家庭のことを考えて、あえて都会に出ない、という意見があった。

ほかに、「倍率が高くて、教師の採用試験を合格するのに7年かかった。青森県での採用だから、青森を出るとまた採用試験を受けなくちゃいけないんだよね……」(青森県・30代女性・独身)という切実な声や、「『闇金ウシジマくん』を読んでいたら、騙す人がたくさんいそうで、都会に行くのが怖くなった」(青森県・30代男性・既婚)という声もあった。

地方に住む人には、地元への愛着や都会に住まない理由など人によってさまざまな事情があるようだ。また、インターネットのサービスが発達して、地方の不自由さが軽減しているのも大きいかもしれない。都会に対する偏見も、上京する前の筆者が、都会人に対する負のイメージを持っていたことを考えれば仕方のないことだろう。

異性とは普段どこでデートするの?

住む場所が都会か地方かに関係なく、気になるのはやはり異性関係だ。多くの「上京組」の記憶は学生時代のデートで止まっているはず。社会人になったいま、自分たちの生まれ育った町でどういったデートを重ねているのか、率直な疑問をぶつけてみる。

圧倒的にイオンが多い

「下田のイオンが多いかな。でも、仲間内では“下ジャス(下田のジャスコ)”って呼んでる(笑)。ほかには青森市とか、八戸市、弘前市とか、地方の中でも都会っぽい場所をセレクトしてる気がするなぁ。てか、東京って電車でデートなんでしょ? 道中あんまり話せなくない? その辺辛くないのかな? 荷物とかもあると思うし、かえって都会の電車デートのほうが不便そう」(青森県・30代男性・既婚)
※「JUSCO(ジャスコ)」とは
イオングループがかつて運営していた、大型ショッピングモール。1969年から営業していたが、2011年3月1日に、「SATY」を運営するマイカル社と吸収合併したことにより、屋号を「AEON(イオン)」に統一した。

毎度イオンばかり行って飽きないのかと疑問に思い、聞いてみたところ、「イオンは2~3年に一度、大規模なリニューアルするから飽きない」という意見や、「カルディやタリーズ、ドトールなど、全国のチェーン店が最近入ってきたから楽しい」という意見もあった。これを聞くと、いろんなお店が凝縮されているイオンの素晴らしさを感じられるかもしれない。

居酒屋だけのデートもOK

「遊びに行くところも特にないので、飲みで済ませてしまうことが多いな。そのほうがゆっくり話せるしね。たまに服を買いに行くのに遠出したくなるけど、別に女の子と一緒である必要もないから、デートはやっぱり飲み一択です」(北海道・20代男性・独身)

デートででかけるスポットがほとんどないから、居酒屋へ行くだけでデートが成立するのは、地方の特権かもしれない。都会では選択肢が多いために、デートプランのセンスが問われるから、シティボーイも楽ではない。

そのほか、少し栄えている都市部へ出かけるという“シティ派”も多い一方で、山や海に出かけるなど、地方の強みを活かした“自然派”デートをする人や、自宅から外に出ず「やることをやる」だけという人もいた。

どうやっていまの仕事に就いたの?

大学進学で上京した人は、地元の就職活動の実情を知らない。地方には働き口がないイメージがあるが、一体どうやっていまの仕事をゲットしたのだろうか。

親のコネで入った

「田舎だと一部の大きい会社以外は、新卒採用がなくてだいたいコネ。自分も親のコネで入ったけど、そんなに悪いこととも思ってないな。都会では大学行ったほうが就職に有利なのかもしれないけど、地元では学歴よりコネ。地元で大手にこだわらないのなら大学に行く意味はないかも」(青森県・30代男性・独身)

「新卒で、仙台にある大手の企業に勤めていた友人がいて、辞めて青森に戻ってきたんだけど、青森で転職先が見つからず、結局仙台に戻ってしまった」(青森県・30代男性・既婚)

やはり一番強いのは“コネ”らしい。親が重役に就いていれば、「入りたい」の一言で入社できてしまうという情報もあった。逆にコネがないと大卒でも厳しいというのは個人的に驚きだった。「大学に行く意味がない」とまでは思わないが、将来地元に帰りたいかまでを含めて進学するか否かを決めたほうがいいのかもしれない。

実習先でそのまま履歴書を置いてきた

「保育園の教育実習のときに『ここで働きたいです』って旨を伝えて、その場で履歴書を渡して帰ってきた。無事にそこで採用してもらったんだけど、それは珍しいことじゃないんじゃないかな。あと事務員はだいたい商業高校から採られるとか、一定のルートも確立されてるね。あとは消防とか自衛隊とか公務員も多い」(青森県・30代男性・既婚)

「実習先にそのまま」や高校の推薦などエスカレーターとは言わないまでも、地元には地元のルートがある程度決まっているらしい。そうなると、都会から帰ってくる人が地元で就職するのは、かなり大変かもしれない。

年収とか、ぶっちゃけどんくらい?

下世話な話だが、「地元組」の年収は正直気になるところである。地元に帰って久しぶりに会う友人へ収入について聞くのは忍びないが、「記事作成のため」と断れば問題ない。「上京組」が気になる年収について聞いてみた。

共働きしないと絶対無理なくらい

「年収は250万円くらいかな。共働きじゃないと絶対生活していけないよね。旦那さんの稼ぎだけで生活していける人なんて自衛隊とか消防隊の奥さんくらいなんじゃない? だから、自衛隊とか消防隊は女性に人気があるよね(笑)。じゃなきゃ、下手したら奥さんのほうが稼いでるぐらいだよ。あと地元の会社は、よほど大きい会社じゃないとボーナスなんて出ない」(青森県・30代男性・既婚)

収入が少なくても、その分支出が減り、文化的な生活ができるのかと思いきや、現実は厳しいようだ。地方出身の知り合いに、「自衛隊や消防隊がモテる」という話を聞いことがあったが、収入面が理由のひとつなのかもしれない。

英語力を要する米軍基地での仕事は収入が高め

「どの仕事も最低賃金レベルなんだけど、英語力を必要とする米軍基地の仕事は賃金がかなり高めだって聞いた。英語での応対が求められるので、具体的な条件としてはTOEIC500~800くらいで書類を作れる英語力と、要求も高め。でも米軍基地の仕事が受からなくても、通訳とかの需要があるし、英語ができれば潰しが効くよね」(青森県・30代女性・既婚)

グローバルな人材を求める企業が多い東京では、英語が話せる人はそれほど珍しくもないが、まだまだ地方では希少価値があるらしい。英語力を宝の持ち腐れにしている人がいたら、地元に帰ってラグジュアリーな生活をしてみるのも良いかもしれない。

実家暮らしが多いのは、お金がないから?

先の収入の話を受けて、筆者は考えた。地元で実家暮らしをしている人が多いのは、お金がないからではないかと。ズケズケと聞きすぎている気もするが、不躾な質問にも快く応じてくれた人たちの回答がこちらである。

金銭面というより一人暮らしの必要性がわからない

「親子関係が悪いわけじゃないし、“ひとりで住まなくても良くない?”って発想だったけどな。親も嫌がるわけじゃないし、自立したいっていう考えには至らなかったなぁ。大人だから夜中に遊びに行っても何も言われないし、実家にいて不自由することもなかったんだよね」(青森県・30代男性・既婚)

確かに実家暮らしに不自由を感じていたのは、まだ学生のころだ。社会人になってからであれば、窮屈に思うこともあまりないのかもしれない。

親が心配していたから帰ってきた

「学生時代、仙台で一人暮らしをしてたんだけど、親が心配していると思って卒業を機に帰ることにしたんだよね。実際、俺も年老いていく親の側にいてあげたかったし。一人暮らしを経験して、けっこう満足したなって気分だったし、ちょうど良かったのかも」(青森県・30代男性・独身)

親の心配や老化を気にして地元に帰るのは、大人に成長した証かもしれない。一人暮らしの理由は経済的面が大きいのかとゲスな勘ぐりをしていたが、そうではないらしい。とは言え、莫大なコストをかけて一人暮らしをしている身には、一定のお金を入れて実家に住めるのは羨ましい。

最後に

地元に残る人たちにいろいろな話を聞いたが、地方に住み続けている人の中には、筆者とは逆に、都会に出た人の生活に興味を持ったり、疑問を感じたりする人が多くみられた。

歳を重ねてしまうと、仕事や家族のことがあるため、興味半分で地方や都会には引っ越しにくくなる。しかし、いまの生活に満足していると言っても、少なからずお互いの生活に憧れがある。年に1、2回地元の友達と集まったときに昔話に花を咲かせるのも良いが、お互いの現在の生活を語りあって“疑似体験”してみるのも盛り上がりそうである。

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