未来型都市がもうすぐ実現!?
「スマートシティ」って何?

ガイド:船木 麻里

都市での生活は時代とともに移り変わってきました。交通機関が発達していない江戸時代は、基本的に「家で働く」か「家の近く」で働き、遠くで働く場合は「住み込み」が基本でした。しかし、鉄道や車が普及すると、通勤して遠くの会社へ勤めることができるようになりました。技術の発達によって、都市での生活様式が変化していくのです。そしていま、またIT技術の発達によって、都市での生活が変わろうとしています。スマートシティは、いまの都市が抱える、エネルギー問題、環境問題、高齢化、災害時の対策などのさまざまな課題を解決するものとして期待されています。

現在の都市は、エネルギー問題、環境問題、高齢化、災害時の対策など、さまざまな課題を抱えています。それらを解決する方法のひとつとして期待されているのが「スマートシティ」です。

スマートシティはコンパクトな街の形

「スマートシティ」とは、ITなどの最新技術を利用して省エネルギーを実現する都市のことです。これまでの都市は、電気を発電所で作り、送電線などを経由して、一般家庭や企業へ届けていました。しかし、これにはさまざまな無駄があります。

例えば、電力消費量のピークです。電力会社は電力不足による停電を避けるため、電力消費量のピークを見越して、余裕を持って発電しています。つまり、無駄に発電をしているわけです。また、電気を遠くまで運ぼうとすると、徐々に減衰していきます。電気を使う場所と作る場所が近ければ近いほど、無駄が少なくなるのです。さらに災害時に電線が切れると、そこから先は電気を供給できないという問題もあります。

スマートシティは、電気などの生活インフラ、サービスを賢く使う街

そうった無駄をなくして、「ITを活用してスマート(賢く)に電気を使おう」というのがスマートシティのコンセプトです。スマートシティでは、家庭、企業などの電力消費量をリアルタイムで管理し、必要な電力を無駄なく供給します。

さらに、電力の地産地消も進みます。いま、太陽光発電、風力発電などを利用し、従来の電力会社に頼らない発電施設が増えています。ITを利用すれば、そういった施設で発電したエネルギーを一元的に管理できるので、地域で作られた電気をその地域で消費する仕組みを作ることができます。

「電気を賢く使う街」というコンセプトで解決できる問題は、電気だけではありません。電気を効率よく発電することでCO2の発生量を減らせるので、環境問題の解決にも寄与します。また、電気の地産地消が進めば、災害時に送電線が切れたとしても、その地域で発電して対応することも可能です。

電気以外にも、ITで一元管理することで、水道やガスなどの生活インフラ全体を効率よく運用することができます。さらには、効率的な行政サービス、学校などの教育環境、医療、安全、モビリティ(人の移動手段)など、都市全体の形が変わるとさえ言われています。

海外での動き

スマートシティをめぐる動きは、日本より海外のほうが進んでいます。アメリカでは、2009年、オバマ大統領の「グリーン・ニューディール政策」の中で取り上げられた「スマートグリッド」という取り組みが注目されました。これがまさにスマートシティのコンセプトのもとといえます。グリッドとは送電網のことで、スマートグリッドはまさに前述の「電気を賢く使う仕組み」そのものです。

また、石油産出国であるアラブ首長国連邦は、スマートシティの先進国といえます。現在は石油による利益で国全体が潤っていますが、石油は有限でいずれ枯渇します。その先を見越して、石油に依存しない、新しい都市づくりが模索され、その一環としてスマートシティ構想に取り組んでいます。

中でも、マスダールシティでの取り組みは有名で、石油産出国でありながら、石油による電力をまったく使用せず、太陽光など再生可能エネルギーを用いて、CO2や廃棄物を出さない都市を作ろうとしています。

日本での動き

2010年、日本では、福岡県・北九州市、愛知県・豊田市、神奈川県・横浜市、京都府・関西文化学術研究都市の4カ所を、「次世代エネルギー・社会システム実証地域」として選定し、スマートシティ実現に向けた取り組みを始めています。

2011年には千葉県柏市が、地域活性化総合特区、環境未来都市として指定され、大学を中心に、地域のエネルギーを一元管理し、CO2を出さない都市をつくろうとしています。さらに、高齢者にとって住みやすい、医療や介護が進んだ都市づくり、ベンチャー起業が活動しやすい都市づくりを目指しています。

スマートシティで家もスマートに

スマートシティになると、家庭で使用される電気や発電される電気も管理できるようになります。まず、電気を賢く使うため、各家庭にHEMSとスマートメーターが取り付けられます。HEMSとは、ホームエネルギーマネージメントシステムのことで、家のエアコンや冷蔵庫などの家電製品と太陽光発電パネルなどの発電設備を接続して、家で使う電気と家で作られる電気を「見える化」して、管理、制御します。

スマートメーターとは、新しいタイプの電気メーターです。従来の電気メーターは、電力会社の係員が各家庭を回って、消費量を検診していましたが、スマートメーターならネットを通して、各家庭、そして都市全体の電力消費状況を、リアルタイムに知ることが可能になります。それにより、効率的な発電などが可能になるわけです。

また、電気自動車なども巨大なバッテリー(蓄電池)として使用します。電気自動車を家で充電するだけでなく、電力が不足したときには、バッテリーに充電した電気を利用することができるのです。つまり、自動車も電化製品と同じく、HEMSとつながります。

日本政府の「グリーン政策大綱」では、2030年までにHEMSを普及させようと計画しています。鉄道や自動車の登場よって、都市での生活が変化したように、IT技術の発達によって、また都市が新しく変化しようとしています。私たちの生活も、それにあわせて変化していくことでしょう。

2016年8月19日掲載

ガイドプロフィール
船木 麻里(ふなき・まり)
家事セラピスト、整理収納アドバイザー、フリー編集者/ライター

出版社勤務を経て、出産を機に独立。雑誌、書籍等で教育や家庭生活をテーマに幅広く取材、執筆。家事セラピストとして、自分らしく気持ちのいい暮らし方を提案。「引越し9回&立ち退き2回」の経験から引越しにも一家言あり。

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