賃貸の契約ではここに注意!
大家さんが教える、賃貸契約書の読み方(1)

ガイド:御井屋蒼大

賃貸契約は、賃貸住宅に入居するときに必ず結ぶものですが、賃貸契約書の内容は煩雑で、すぐには理解しにくいと思います。しかし、ポイントを押さえてしまえば、そんなに難しいものではありません。借りる物件の基本情報は、頭書に掲載されているので、よく確認しましょう。

重要な書類なのに、賃貸契約書の内容がよくわからないままに契約している人も少なくないと思います。しかし、契約内容をよく理解していないのは、トラブルの原因になりかねません。今回は、国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」を基に、不動産投資サークル「ふどうさんぽ」の代表をしている御井屋蒼大さんに、賃貸契約書で注意するポイントを解説していただきました。多くの賃貸物件で大家さんをしている、御井屋さんならではの視点で賃貸契約書を紹介します。

(1)賃貸借の目的物

ここで使用する賃貸契約書は、国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」をもとにしています。これは、不動産会社などで使用している賃貸契約書のもとになっているものです。賃貸契約を結ぶときは、この賃貸住宅標準契約書との違いにも注意しましょう。

「賃貸住宅標準契約書」(改訂版)はここからダウンロード

賃貸契約書―頭書

建物の名称・所在地等

建物の「名称」と「所在地」は、言うまでもないですね。「○○ハイツ」といった建物の名前と、その建物が建っている場所のことです。たぶん、この中で耳慣れないのは、「建て方」の部分だと思います。

■建て方
建て方には、大きく分けて3つの種類があります。耳慣れない言い方をしていますが、実はどれもよく見るタイプの住宅です。

  • 一戸建 1軒の建物を1戸で使用する建物のこと
  • 共同建 2戸以上で廊下や階段などを共用する集合住宅のこと。いわゆる、マンションやアパートを指す
  • 長屋建 2戸以上の住宅で、玄関が1階にあり、各戸の2階への移動は内階段を使用するタイプの建物のこと。いわゆるテラスハウスなどが長屋建にあたる
建て方の種類

長屋というと、時代劇などで見かける1階建ての住居を想像してしまいますが、現代では2階建てになっても長屋と言います。レトロな言い方が、いまでも残っているんですね。

■構造
構造では、建物の梁や柱をどのような部材で造っているのかを記載しています。

  • 木造 主要な部材に木材を使用しているもの
  • 非木造 部材に木材以外のものを使用しているもの

非木造は、大きく分けて、「鉄筋コンクリート(RC)」と「鉄骨」があります。鉄骨は、さらに「軽量鉄骨」と「重量鉄骨」に分けられます。軽量鉄骨は、いわゆるプレハブ構造の建物で使われています。アパートなどの集合住宅の多くは、軽量鉄骨です。重量鉄骨は軽量鉄骨よりも耐久性に優れていて、5階建てのように大きな建物で使用されます。

木造でも軽量鉄骨でも重量鉄骨でも、聞こえる騒音にほとんど違いはありません。騒音を気にする場合は、RC構造のものを選ぶと良いでしょう。構造では、RC構造かそれ以外なのかを気にすれば十分です。

■工事完了年
工事が完了した年のことです。築年数がこれからわかります。大規模修繕とは、外壁・屋根の張り替え、エレベーターの取り替えのような大規模な工事を指します。工事完了年が古くても、大規模修繕の年が近ければ、建物がきれいになっていることがわかります。

住戸部分

住戸番号、間取りはそのままの情報なので、契約書では特に気にする必要はありません。

■面積
賃貸契約書での面積は、専有面積を表しています。占有面積とは、部屋を借りている人が自分専用で利用できるスペースの広さのことです。ここには、ベランダやバルコニーは含まれていません。

ところが、物件情報などで表示されている面積は、専有面積でないことがまれにあるので、注意が必要です。例えば、実際には、専有面積が15平方メートルしかないのに、ロフトが5平方メートルあると、それとあわせて20平方メートルと表記していることがあるのです。物件自体が気に入ってしまえば問題はないのですが、物件情報を見るときは間取り図などをよく確認しておいたほうがいいでしょう。

■設備等
借りる部屋の設備を表しています。物件を選ぶときに確認していると思いますが、契約書でも改めて確認しておきましょう。よくあるのが、設備だと思っていたら前の住人が置いていったものだった、というケースですね。設備ではないので、故障や問題が起こっても大家さんは対応してくれません。契約書を見て、設備に含まれていなかったら確認しておきましょう。

あとは、重要なポイントに絞って解説します。

・風呂、トイレ、洗面台
お風呂、トイレ、洗面台が浴室で一緒になっているものを3点ユニットバスというのですが、最近ではあまり借りる人に好まれていません。お風呂とトイレが別(BT別)で、独立洗面台の物件のニーズが高くなっています。だから、BT別・独立洗面台の物件と比べたとき、3点ユニットバスのほうが安く借りられることが多いです。駅近くの物件でも、3点ユニットバスの物件にすることで、家賃を抑えることができます。

3点ユニットバス

・インターネット対応
インターネット対応という物件には、インターネット回線を引くことができる、という意味と、インターネットを無料で使える、という意味のふたつがあります。だから、インターネット対応と書かれていても、よく確認してください。

ちなみに、インターネットが無料で利用できる物件でも、さらに無線LANが使えるものと、LANポートがあるだけのものがあります。スマートフォンやタブレットを使う人なら、最初から無線LANが利用できる物件がおすすめです。

・使用可能電気容量
アンペア数は大きくなると、そのぶん電気の基本料金が高くなります。アンペア数を大きくしたい場合は、不動産屋会社経由で大家さんに確認してください。

・ガス
エリアによっては、プロパンガスしか選べないことがあります。ガス代はプロパンガスより都市ガスのほうが安いので、利用できるエリアなら都市ガスのほうがいいでしょう。

・上水道
受水槽とは、水道水を一時的に貯めておく設備のことです。ビルやマンションで使用されていましたが、最近ではあまり使われていません。飲料水として井戸水を使うこともあまりないので、いまではほとんどの住宅で、水道は水道本管から直結されていることになります。

・下水道
浄化槽は、汚水を微生物の力で分解する設備です。いまは公共下水道を使っていることが多いので、あまり見かけることはないと思います。下水道も浄化槽もない場合は、汲み取り式になります。

付属施設

自動車を持っている人は、駐車場のある物件が便利でしょう。ほかに駐車場を借りるよりも近くに自動車が置けます。バイク置場は、バイク専用で用意している物件があります。自転車といっしょに置くよりも、すみ分けができているのでトラブルが起こりにくくていいと思います。

物置は、収納が増えるので、あれば便利だと思います。海に近い湘南エリアだと、サーフボード置き場やシャワーを付属設備として持っている物件を見かけたことがあります。サーフィンが好きな人には最適です。サイズは小さいですが、箱型の物置を設置している物件もあります。

専用の庭は、1階に住んでいる人の特権という感じでしょうか。ないよりは、あったほうがいいですが、ご年配の方ならともかく、若い人では庭で何かをするという人は少ないです。

(2)契約期間、(3)賃料等、(4)貸主及び管理業者、(5)借主及び同居人

(2)契約期間

賃貸契約書

基本は2年間になります。契約を更新するときに、更新料と更新手数料を支払う必要があります。更新料は大家さんに、更新手数料は管理会社に支払われ、合計して家賃2ヵ月分くらいが相場です。更新のときにかかる費用についても賃貸契約書に書かれているので、きちんと確認しておきましょう。

契約期間を3年にしてほしい、と交渉することは可能ですが、契約期間の長さは大家さんではなく、大家さんが依頼している管理会社との関係で決まっていることが多いので難しいかもしれません。

ただ、契約更新のたびに家賃の2ヵ月分も払うとなると、借りている人が更新を機に引っ越そうか、と考えてしまう可能性があるので、私の場合は更新料を受け取っていません。更新のときにかかるのは、管理会社の更新手数料だけにしています。引越しをされて部屋が1ヵ月以上空いてしまうよりは、そのまま住んでもらったほうがいいですし、経年劣化した部分の修繕費は大家さんが負担しなくてはいけないためです。

(3)賃料等

賃貸契約書

■賃料、共益費

  • 賃料 物件を借りる対価として支払う金額のこと
  • 共益費 共同で使用する廊下の清掃費や光熱費などのこと

物件情報では、賃料と共益費を分けて表記していることがほとんどですが、大家さんに支払うのは、これらを合計したものです。賃料と共益費を合計したものを家賃と考えて物件を選びましょう。

■敷金
借りた部屋をきれいに使ったとして、退去するときにいくら返金されるのか、契約するときに確認しておいたほうがいいでしょう。

例えば、退去するときのルームクリーニング代を、敷金とは別に支払う場合と、敷金から支払うケースがあります。敷金からルームクリーニング代を支払う場合は、どんなに多くてもルームクリーニング代を引いた分しか敷金が返ってきません。金額が曖昧なままだと、退去するときにトラブルになる可能性があります。

退去するときに、敷金が思ったほど返ってこないケースは意外とあります。住んでいた本人はきれいに使っているつもりでも、床にものを落としていたり、引越しの入居、退去のときに家具をぶつけてしまっていたり、知らない間に傷が付いていることが少なくありません。あまり全額返ってくるつもりでいないほうがいいと思います。

■その他一時金
最近はだいぶ少なくなりましたが、礼金が一時金にあたります。礼金とは、「物件に住まわせていただくお礼」として大家さんに支払う謝礼のことです。敷金は必要な経費を引いた金額が返ってきますが、礼金は絶対に返ってこないお金です。敷金1ヵ月、礼金1ヵ月という物件なら、敷金2ヵ月という物件のほうがいいかもしれませんね。

ただ、立地が良くて新しい物件だと、礼金を取るケースはまだあります。逆に言うと、誰もが入居したいと思うような、新しくて、条件の良い物件でなければ、大家さんは礼金をもらえないと思っています。ほかの競合する物件が礼金を取っていないのであれば、礼金が必要な物件をわざわざ借りる人はいませんからね。

■付属施設使用料
使う人と使わない人がいる設備がある場合、使う人が支払う形式になっていることが多いですね。駐車場やバイク置き場などがこれにあたります。

(4)貸主及び管理業者

賃貸契約書
  • 貸主 管理会社に物件を委託している人や法人
  • 管理業者 物件を管理する不動産管理会社
  • 建物の所有者 物件を所有している人や法人

ほとんどの場合、貸主というのは、その物件を所有している人や法人、つまり大家さんのことです。ただ、まれに物件を所有している大家さんから委託されて、管理会社との業務を引き受けている人や法人があります。そういった場合、貸主はその人や法人になり、大家さんは建物の所有者と表記されます。

(5)借主及び同居人

賃貸契約書
  • 借主 物件を直接契約する人
  • 同居人 契約した物件に一緒に住む人

物件に一緒に住む人がいたら、その人が同居人になります。物件に住んでから同居する人が増えた場合は、その都度、大家さんに連絡する必要があります。

緊急時の連絡先は、問題が起こったときに大家さんや管理会社が連絡する先です。問題が起こったときに相談できる人であれば、誰でも大丈夫です。借主の親族を連絡先にすることが多いのですが、勤め先の会社を連絡先にしても大丈夫です。


2016年9月16日掲載

ガイドプロフィール
御井屋蒼大(みいや・そうだい)
不動産投資サークル「ふどうさんぽ」主催

不動産投資サークル「ふどうさんぽ」を主催。会社勤務の傍ら、不動産投資を開始。現在はサラリーマンを卒業し、不動産賃貸業、講師紹介業など精力的に活動中。

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