賃貸の契約ではここに注意!
大家さんが教える、賃貸契約書の読み方(2)

ガイド:御井屋蒼大

賃貸契約書というと、難しいと思う人が多いかもしれませんが、実際はごく常識的なことが書かれています。普通に生活している分には、賃貸契約書の内容をめぐって問題が起こることはないでしょう。しかし、借りた部屋を事務所としても使用したい、猟銃などを保管したいというときは、賃貸契約書の内容を確認して、大家さんに連絡して許可をもらう必要があります。

前回に引き続き、今回も賃貸契約書の内容について、不動産投資サークル「ふどうさんぽ」の代表をしている御井屋蒼大さんに解説をしていただきました。注意するポイントを確認して、賃貸契約を結ぶときに疑問があれば、不動産会社にどんどん質問してみましょう。

家賃を滞納しても敷金から払うことはできない?

ここで使用する賃貸契約書は、国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」をもとにしています。これは、不動産会社などで使用している賃貸契約書のもとになっているものです。賃貸契約を結ぶときは、この賃貸住宅標準契約書との違いにも注意しましょう。

「賃貸住宅標準契約書」(改訂版)はここからダウンロード

第1条~第3条 賃貸契約の基本

(契約の締結)
第1条 貸主(以下「甲」という。)及び借主(以下「乙」という。)は、頭書(1)に記載する賃貸借の目的物(以下「本物件」という。)について、以下の条項により賃貸借契約(以下「本契約」という。)を締結した。

(契約期間及び更新)
第2条 契約期間は、頭書(2)に記載するとおりとする。
2 甲及び乙は、協議の上、本契約を更新することができる。

第1条と第2条は、契約書としての基本的な文章ですね。第1条で契約を締結したことを宣言して、第2条で契約期間と契約の更新について定めています。契約書に慣れていない人は、甲が誰か、乙が誰か間違えないように気をつけてください。

  • 甲 物件を貸す人
  • 乙 物件を借りる人

(使用目的)
第3条 乙は、居住のみを目的として本物件を使用しなければならない。

契約した物件が、住宅として契約したものなので、「住む以外の使い方をしないでください」と定めています。もし、住宅だけでなく、事務所など住宅以外の目的でも利用するのであれば、このあとに解説する第18条の特約条項で追記する必要があります。

第4条~第6条 賃料、共益費、敷金

第4条 乙は、頭書(3)の記載に従い、賃料を甲に支払わなければならない。
2 1か月に満たない期間の賃料は、1か月を30日として日割計算した額とする。
3 甲及び乙は、次の各号の一に該当する場合には、協議の上、賃料を改定することができる。
 一 土地又は建物に対する租税その他の負担の増減により賃料が不相当となった場合
 二 土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により賃料が不相当となった場合
 三 近傍同種の建物の賃料に比較して賃料が不相当となった場合

賃料、つまり家賃について定めています。借主は、前回解説した頭書で定めたとおりの家賃を貸主へ支払う必要があります。

第2項はちょっとわかりにくいのかもしれませんが、1ヵ月は30日だったり、31日だったり、ときには28日だったりするのですが、これを一律30日にしています。家賃を日割り計算するときなど、1ヵ月が30日じゃない月だったとしても、計算が簡単になるので、便宜上1ヵ月30日で統一するわけです。例えば、家賃6万円の物件で、18日分の家賃が発生する場合は、次のようになります。

  • ■家賃が6万円の場合
  • 日割り家賃 60,000円÷30日=2,000円
  • 18日分の家賃 2,000円×18日=36,000円

第3項は、契約期間中でも、大家さんと借主と話し合って家賃を変えることができるとしています。一~三の条件に当てはまっているときは、大家さんが「家賃を上げたい」と言うことができるし、逆に借主が「家賃を下げてほしい」と言うことができます。お願いすることはできるけど、実際に相手が了承してくれるかどうかは、「協議の上」というわけで、それはまた別の話です。

(共益費)
第5条 乙は、階段、廊下等の共用部分の維持管理に必要な光熱費、上下水道使用料、清掃費等(以下この条に(略)

共益費は、頭書で触れたように、マンションやアパートの住人が共同で使用する廊下などの施設を維持・管理するために必要な費用のことです。実際に住むことになったら絶対に支払わなければいけないものですから、基本的に家賃と同じです。家賃と同じように、必要に応じて日割り計算されますし、共益費の金額を上げたり、下げたりといった話し合いをすることもできます。

(敷金)
第6条 乙は、本契約から生じる債務の担保として、頭書(3)に記載する敷金を甲に預け入れるものとする。
2 乙は、本物件を明け渡すまでの間、敷金をもって賃料、共益費その他の債務と相殺をすることができない。
3 甲は、本物件の明渡しがあったときは、遅滞なく、敷金の全額を無利息で乙に返還しなければならない。ただし、甲は、本物件の明渡し時に、賃料の滞納、第14条に規定する原状回復に要する費用の未払いその他の本契約から生じる乙の債務の不履行が存在する場合には、当該債務の額を敷金から差し引くことができる。
(略)

敷金について定めている部分です。第2項に書かれているのは、家賃や共益費を滞納しても、敷金から支払うということはできない、ということです。ところが、第3項では、物件を解約して明け渡すときに、家賃の滞納があった場合は、敷金から差し引くことができるとしています。つまり、家賃を滞納していた場合は、出て行くときに敷金から家賃を払うことになるわけです。だから、家賃を滞納していると、実際には敷金から払うことになるんですね。

とはいえ、敷金が1ヵ月の物件だった場合は、ルームクリーニング代などを払うと、滞納していた家賃を払いきることはできないので、不足した分はまた請求されることになります。

物件を借りるうえで注意すること

第7条~第8条 禁止されていること、注意が必要なこと

(反社会的勢力の排除)
第7条 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。
 一 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という。)ではないこと。
(略)

これは半ば定型文として書かれている条文で、賃貸契約書に限らず、いまはさまざまな契約書に書かれています。反社会勢力に関わっていないことを確認するための条文なので、これに偽って契約した場合は、契約が無効になります。つまり、反社会的勢力に物件を貸すことはできないですし、反社会的勢力だとわかったら契約を無効にできるわけです。

(禁止又は制限される行為)
第8条 乙は、甲の書面による承諾を得ることなく、本物件の全部又は一部につき、賃借権を譲渡し、又は転貸してはならない。
2 乙は、甲の書面による承諾を得ることなく、本物件の増築、改築、移転、改造若しくは模様替又は本物件の敷地内における工作物の設置を行ってはならない。
3 乙は、本物件の使用に当たり、別表第1に掲げる行為を行ってはならない。
4 乙は、本物件の使用に当たり、甲の書面による承諾を得ることなく、別表第2に掲げる行為を行ってはならない。
5 乙は、本物件の使用に当たり、別表第3に掲げる行為を行う場合には、甲に通知しなければならない。

賃貸物件は、あくまでも借りているものなので、大家さんにとって迷惑になるようなことをしてはいけません。ここでは、そういったことが書かれています。

最近では、民泊が注目されているのですが、転貸…つまり又貸しはしてはいけないとなっています。知り合いがたまに泊まりに来るくらいなら問題はないのですが、不特定多数の人が泊まりに来るのは問題です。

ビジネスとして物件を借りて、民泊をやっている人の中には、賃貸契約を解除されて怒っている人がいるそうなのですが、契約書にはちゃんと転貸できないように書いてあるんですよ。その場合、賃貸物件で民泊を行うのは契約違反になります。基本的に、民泊などの用途で利用されないように、賃貸契約書にはそういう条文が盛り込まれています。通常、民泊のために物件を利用するには、大家さんの許可が必要です。

賃貸契約の話からは少し離れるのですが、物件を持っている大家さんが民泊として利用する場合は、まだ法の整備が追いついてなくてグレーゾーンなので、貸すことができますね。ただ、分譲マンションで民泊をやろうとすると、不特定多数の人が出入りすることでマンションのほかの部屋の資産価値が下がってしまう可能性があるので、マンションの管理規約で禁止されている場合が多いです。

・第2項
勝手に増改築や大幅な改造をしてはいけない、としています。あとは、専用の庭があるからと勝手に物置を建てるのも禁止です。原状どおりにして大家さんへ返さなくてはいけないので、これは当然と言えます。

・第3項
行ってはいけないことを別表第1で示しています。どれも当然といえば当然のものばかりなのですが、趣味で狩猟をやっていたりすると、部屋で鉄砲を保管しなくてはいけませんから、大家さんに許可をもらう必要があります。最近、狩猟を楽しむ女性が増えていますが、まず大家さんの許可が必要なので注意してください。

・第4項
別表第2で大家さんに書面で許可をもらう必要があることを示しています。

・第5項
別表第3で大家さんに事前にお知らせする必要があることを示しています。頭書にもありましたが、同居人が増える場合は、大家さんに連絡が必要です。また、1ヵ月以上留守にするときも、事件と思われるかもしれないので、事前に連絡しておいたほうがいいでしょう。

第9条 借主が修繕の費用を負担すること

(契約期間中の修繕) 第9条 甲は、乙が本物件を使用するために必要な修繕を行わなければならない。この場合において、乙の故意又は過失により必要となった修繕に要する費用は、乙が負担しなければならない。
2 前項の規定に基づき甲が修繕を行う場合は、甲は、あらかじめ、その旨を乙に通知しなければならない。この場合において、乙は、正当な理由がある場合を除き、当該修繕の実施を拒否することができない。
3 乙は、甲の承諾を得ることなく、別表第4に掲げる修繕を自らの負担において行うことができる。

借りている物件が壊れたり、傷んだりしたときの費用を誰が負担するのかが書かれています。借主に原因があるときは、修理の費用は借主の負担になります。ただ、修理するときは、第2項にあるように、予め大家さんに連絡しなくてはいけません。酔って転んで壁に穴を開けてしまった、と修理するのはいいのですが、大家さんに何も言わずに修理してはいけません、というわけです。

・第3項
電球や蛍光灯、障子紙などの取り替えといった、軽微な修繕については、借主の負担になります。第9条はほぼそのまま使われることが多く、書き換えることはほとんどありません。

賃貸物件の契約を解約するには

第10条 賃貸契約の解除するとき、解除されるとき

(契約の解除)

第10条 甲は、乙が次に掲げる義務に違反した場合において、甲が相当の期間を定めて当該義務の履行を催告したにもかかわらず、その期間内に当該義務が履行されないときは、本契約を解除することができる。
一 第4条第1項に規定する賃料支払義務
二 第5条第2項に規定する共益費支払義務
三 前条第1項後段に規定する費用負担義務
(略)

契約の解除は、貸主から借主に対して一方的に行う、かなり厳しい措置です。重大な落ち度が借主にあるときに行われます。

私の場合ですが、ここに「2ヵ月滞納したら賃貸契約を解除する」という条文を加えています。国土交通省が用意している賃貸住宅標準契約書だと、どれくらい家賃を滞納したら契約を解除するのか明確になっていません。あと、契約を解除したときに、物件に残していった荷物に関しても、所有権を破棄してもらうようにしています。住人が出て行って、誰も家賃を払わなくなったのに、荷物が残っていると新しく別の人に貸すことができませんから。荷物の所有権が元住人にあると勝手に捨てることができないので、契約を解除したときに所有権を破棄してもらうわけです。

ただ、賃貸契約書で所有権の破棄に同意していなくても、家賃滞納や夜逃げなどで荷物を残して退去した場合は、断りなく処分するのが世の中の通例になっています。退去した人は、「弁償しろ」と言おうにも、逆に「滞納した家賃を払え」と言われてしまいますから。

第11条~13条 賃貸契約の解約から明け渡し

(乙からの解約)
第11条 乙は、甲に対して少なくとも30日前に解約の申入れを行うことにより、本契約を解約することができる。
2 前項の規定にかかわらず、乙は、解約申入れの日から30日分の賃料(本契約の解約後の賃料相当額を含む。)を甲に支払うことにより、解約申入れの日から起算して30日を経過する日までの間、随時に本契約を解約することができる。

借りている人が物件を退去するときに、何日前に連絡するかを示しています。ここでは、30日前と書かれていますが、2ヵ月前となっている契約書もあるので、賃貸契約をするときは注意してください。2ヵ月前に連絡することになっているのに、1ヵ月前に連絡すると、その人は1ヵ月分余計に家賃を払わなくちゃいけなくなります。

(契約の消滅)
第12条 本契約は、天災、地変、火災その他甲乙双方の責めに帰さない事由により、本物件が滅失した場合、当然に消滅する。

賃貸契約そのものが消滅してしまうケースについて書かれています。天変地異で建物が壊れて住めなくなってしまったら、どうしようもないですよね。住めなくなってしまいますから。そういう場合は、契約自体が消滅します。

(明渡し)
第13条 乙は、本契約が終了する日までに(第10条の規定に基づき本契約が解除された場合にあっては、直ちに)、本物件を明け渡さなければならない。
2 乙は、前項の明渡しをするときには、明渡し日を事前に甲に通知しなければならない。

契約が終了する日までに物件を明け渡して、退去しなくてはいけません。そして、明け渡しの日を連絡しなくてはいけません。

第14条 どれだけ原状回復すればいい?

(明渡し時の原状回復)
第14条 乙は、通常の使用に伴い生じた本物件の損耗を除き、本物件を原状回復しなければならない。
2 甲及び乙は、本物件の明渡し時において、契約時に特約を定めた場合は当該特約を含め、別表第5の規定に基づき乙が行う原状回復の内容及び方法について協議するものとする。

原状回復は、借りた部屋は、借りる前と同じ状態に戻してください、ということです。ただ、壁や畳が日に焼けてしまった、というような経年劣化については原状回復の義務はありません。これについては、通称「東京ルール」と呼ばれているガイドライン(賃貸住宅紛争防止条例)があって、それに沿って敷金で清算することになっています。

物件の損耗の程度にもよるのですが、貸主と借主のどちらが費用負担するのか、事前に確認しておくといいでしょう。別表第5に詳しく書かれていますが、東京都のウェブサイトでも解説しています。

賃貸住宅紛争防止条例について詳しくはこちら

大家さんでも勝手に部屋には入れない

第15条~第18条 物件への立ち入りと連帯保証人

(立入り)
第15条 甲は、本物件の防火、本物件の構造の保全その他の本物件の管理上特に必要があるときは、あらかじめ乙の承諾を得て、本物件内に立ち入ることができる。
(略)

借主の部屋に、大家さんは勝手に入ることはできません。ただ、防火などの正当な理由があれば、借主の許可を得て入ることができます。ただ、本当に緊急のとき、例えば火事で燃えているようなときは、許可なく入ることができます。そうしないと危険ですからね。

(連帯保証人)
第16条 連帯保証人(以下「丙」という。)は、乙と連帯して、本契約から生じる乙の債務を負担するものとする。

連帯保証人は、借主の債務、つまり滞納した家賃などを代わって払わなくてはいけません。ただ、最近では、連帯保証人ではなく、保証会社を使うことも多いですね。

(協議)
第17条 甲及び乙は、本契約書に定めがない事項及び本契約書の条項の解釈について疑義が生じた場合は、民法その他の法令及び慣行に従い、誠意をもって協議し、解決するものとする。

これは、契約書には必ず書いてあることです。契約書に書かれていないことで問題が起こったら、話し合って解決しましょう、という内容になります。

(特約条項)
第18条 第17条までの規定以外に、本契約の特約については、下記のとおりとする。

第17条までに書かれていないことで、追加するものがあれば、ここに追記します。一般的な賃貸契約書には書かれていないことが追加されているわけですから、よく確認しましょう。



契約書とはいっても、借主と貸主で相談して、あとから内容を書き換えることができます。例えば、長く住んでいる人で、信用できると思ったら、大家さんも了解してくれることもあるでしょう。賃貸契約書は、一見わかりにくいと思うかもしれませんが、基本的に常識的なことしか書かれていません。何かあったときのことを、物件を借りる前に決めているだけなので、普通に生活している分には、問題ないことがほとんどです。物件を借りるときに、賃貸契約について確認する機会があるので、もしよくわからないことがあったら、遠慮なく不動産会社に質問してみましょう。


2016年9月21日掲載

ガイドプロフィール
御井屋蒼大(みいや・そうだい)
不動産投資サークル「ふどうさんぽ」主催

不動産投資サークル「ふどうさんぽ」を主催。会社勤務の傍ら、不動産投資を開始。現在はサラリーマンを卒業し、不動産賃貸業、講師紹介業など精力的に活動中。

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