月給16万円なのに1,000万円の車を2台も買ったおっさん「次はゲームセンター作りたい」

ライターのカツセマサヒコです。

世の中には、好きが高じて、趣味の域を超えてしまう人たちがいる。しかし、今回紹介する「とりさん(仮称)」は、その中でもかなりぶっ飛んでる1人だと思う。

とりさん(仮称)プロフィール

青森県でフリーのプログラマーとして活動している44歳。27歳のときに夢だったランボルギーニ「カウンタック」のオーナーになったが、維持できず10ヵ月で売却。5年後、同じくランボルギーニの「ディアブロ SV」を購入。今は次の夢を追いかけている。


27歳で930万円の「カウンタック」を買ったけど維持できず10ヵ月で売却

スーパーカーってめちゃくちゃな値段しますよね。いつ買ったんですか?

27歳のときにランボルギーニ「カウンタック」を買いました。1970年代のころ、スーパーカーブームがきていて、大人になったら欲しいなと思ってたんです。

子どものころの夢を叶えたって感覚なんですかね。いいなあ、それ。

そんな大それた夢ではないですけどね。でも、お金を貯めていって「あ、買える!」って目処が立ってから、実際に購入に至るまでの時間は、本当にテンション上がりましたね。ドキドキしたなあ……。

夢を叶える瞬間ですもんね。長い時間、貯金されたのでしょうし。

でも、当時は安かったですからね、カウンタック。

安いって、いくらだったんですか?

930万円くらい?

「安い」の定義をイチから考え直したい。

発売当初は、バブル景気だったこともあって、6,000万円くらいで取引されていたこともあったんですよ。そう考えたら、中古で930万円なら安いなって。もちろん全額は払えないので、半分を頭金として支払って、あとはローンですよ。

半分でも465万円ですよね? どんなご職業だったんですか?

カラオケ店を運営している会社で働いていました。お金を使う機会もほとんどなかったので、少し切り詰めたら意外とお金が貯まったんです。買って3ヵ月間は緊張して全然楽しくなかったですが(笑)。でも、トンネルの中で反響するエンジン音には最高に興奮しましたね。

そこまでしてやっと買えた愛車を、どうして10ヵ月で手放すことになったんですか?

維持費が想像以上に高くて、泣く泣く手放したんです。当時の僕の手取りが毎月12~15万円。高円寺(東京都杉並区)で家賃3万円の風呂なしアパートに住んでたんですけど、駐車場3万円、ガソリン代4~5万円かかってました。

かかりすぎ! 買う前に気がつくでしょそれ。

あと、首都高でいきなりアクセルペダルが戻らなくなるとか、不測のトラブルとかで、めちゃくちゃお金がかかりましたね。

大事故ですよ、それ。

クラッチをくっつけているジョイント部分のパーツが抜けて、中のベアリングがバラバラになったんです。レッカーで運ばれて、後日に113万円の請求がきました。目玉が飛び出るかと思いましたよ。

まっとうな反応だと思いました。

愛車「ディアブロ」が壊れたので、修理工場に2ヵ月間泊まり込んで自力で直す

「カウンタック」を売ったってことは、今日乗って来た車は違う種類ですよね?

そうですね。「カウンタック」を売ってから5年後に、今度はランボルギーニ「ディアブロ」のオーナーになりました。

なぜディアブロを?

次のランボルギーニを探していたんです。ランボルギーニって、中古で同じ車が出回ることが珍しいので、売りに出たときはすぐに決断しなければいけなくて。お店で実物を見たら車のオーラに圧倒されちゃって、ほとんど衝動的に買っちゃいました。

衝動買いの規模がでかすぎる……。ディアブロのオーナーになって12年経つわけですが、購入されてから順風満帆だったんですか?

いや、それが、まったくそうはならなくて。故障の連続だったんです。「ディアブロは壊れやすい」ってよく聞くんですけど、雑誌に載っていた故障事例を2周くらい経験しました。

■今までの故障事例
 ・クラッチペダルのスプリング折れ(2回)
 ・プラグコード不良によるミスファイア
 ・クラッチレリーズベアリング破損(2回)
 ・コンピュータ故障
 ・バキュームホース穴開きによる燃焼不良
 ・エンジンブロー1回目、チェーンガイド破損
 ・エンジンブロー2回目、ヘッドの歪み
 ・エンジンブロー3回目、バルブ破損
 ・オルタネータ故障
 ・エアコンガス抜け
 ・O2センサー不良
 ・前輪バースト
 ・サイドステップ破損(自爆)
 ・バンパー破損
 ・フロントフェンダー破損

壊れすぎ。


▲ディアブロに搭載されたエンジン

その中でもひどかったのが、エンジンブローかな。エンジンの中に部品が落ちて、シャフトを巻き込んでエンジンが破損したんです。ディアブロのエンジンって、正規で買うと500万円くらいしちゃうんですよ。

エンジンだけで軽自動車5台は買えるじゃないですか!

ええ。さすがに高すぎるので、しばらく乗らずに放置していたんですけど、ある日「名古屋に、ディアブロの事故車が何年も放置してある」って聞いて、チャンスが来たと思いました。

チャンス?

事故車のエンジンが生きていたら、僕の車に乗せ替えられるかなって。

発想が怖い。

この世界では普通なんですよ。それで名古屋に行って見てみると、エンジンが生きていて。だから事故車ごと購入して、名古屋の業者に修理を頼んだんです。だけど修理業者が、半年経ってもまったく手を付けてくれなくて。

ちなみに、事故車はいくらで購入したんですか?

150万円くらいでしたね。

安いと思えちゃうのが怖い。

僕もいろいろあって青森に帰ろうと思っていたタイミングだったから、とりあえず東京のアパートを引き払って、名古屋に直接向かったんです。

え、行ってどうしようとしたんですか?

泊まり込んで僕も手伝って直せば2週間くらいで終わるだろうから、直ったランボルギーニで青森まで帰ろうと思ったんですよ。

自分で直そうっていう発想が浮かぶのもすごい。実際、2週間で直ったんですか?

2ヵ月かかりました。

長すぎるでしょ。

▲名古屋の修理工場でエンジンを乗せ換えている様子

いやー、まさかそんなに修理業者のところに泊まるとは自分でも思わなかったですね。でも、その間にタイヤ交換とか、工具の使い方とか、エンジンのこととか、全部身に付けることができましたからね。ラッキーですよこれは。

ポジティブすぎる……。

自分のお店が持ちたくなって、秋葉原にB級グルメのバーをオープンするもすぐにたたむ

そもそも、なんで青森に帰ろうと思ったんですか?

母と弟が立て続けに亡くなって、父も心臓が悪くて、これは戻ったほうがいいかなっていうタイミングだったんです。

不幸が続いていたんですね……。

あと秋葉原でお店をやっていたんですけど、それもうまくいかなくなったタイミングだったので。

え! お店もやってたんですか!?

そうそう、B級グルメのバーをやっていたんです。昼は、青森県十和田市のB級グルメ「バラ焼き」を提供して、夜はバーとして営業していました。誰だって、「自分のお店を持ってみたい」って、思うものじゃないですか?

▲B級グルメバーの店内の様子

確かにそうですけど、実行できる行動力がすごい。

常連さんもついてきたんですけどね。飲食店の経営が難しいってことは、カラオケ店での経験からもなんとなくわかっていたので、「借金する前にやめよう」って決めていたんです。

引き際がわかっているのもすごい。カラオケ店員やっているだけで身に着く判断力だとは思えないんですけど。

ああ、でもカラオケ店以外にもいろいろな職に就いていたんですよ。水道屋さんだったり、エアコン修理業者だったり、あとは子供の頃からパソコンが好きだったから、プログラマーにもなって。

え、じゃあ今は、車回りも、水道回りも、エアコンも、ウェブサイトも、全部自分で修理できちゃうってことですか?

ああ、そうか、そうなるかもしれない。やったことないのは大工ぐらいですかね?

その気になれば大工もできそうな気がする……。

いろいろやった結果、生命力が上がった気がしますね(笑)

「自宅をゲームセンターにしたい」集めたアーケードゲームの筐体は15台以上

せっかくなのでご自宅を見せてもらうことにしたら、ガレージが「男の子の夢詰め合わせ」みたくなっていて笑った。

ガレージの奥にアーケードマシンがある!?

昔からレトロなアーケード機が好きなんですよ。ガレージには3台で、家の中にも10台くらい置いています。

これ、動くんですか?

電源入れれば動きますよ。

▲電源を差し込むと、一瞬にして全台が稼働

100円を入れなくても動くように設定できるんですけど、「100円入れてプレイする価値」みたいなのが好きなので、あえてそのままにしています。

すごく気持ちがわかる。硬貨を投入したときの緊張感、最高ですよね。

デカい貯金箱だと思ってます。

発想が斬新。ここのガレージって、元から車の改造とかができるところだったんですか?

いや、昔は土間でした。父親とふたりでコンクリを流し込んで、エンジンの乗せ換えまでできるように、徹底的に改造したんです。借家なんですけど、大家さんがいい人なので、やらせてもらっちゃいました。

▲自宅のガレージでエンジンを乗せ替えている様子

「やらせてもらっちゃいました」って規模じゃない。

家賃も、2世帯住宅の一軒家ですけど、2.5万円ですからね。

この大きさで2.5万円!? 安すぎ!

東京にいた頃と比べると、収入は明らかに減ったんですけど、家賃が安いからどうにかなっちゃってるんですよね。生活費を切り詰めることもなくなりましたし。

引越しにそんなメリットまであったんですね。

▲せっかくなので、アーケード機で遊ばせてもらった

ちなみに今カツセさんがプレイしている機体は、60万円くらいかけて輸入したやつです。普通に購入すればもっと安いと思うんですが、国内には売ってなかったので、輸入したんですよ。

お金かかりすぎ。その熱意はどこから来てるんですか?

んー、でも憧れたことありませんか? ゲームセンターとか。

あります。ゲームセンターで一生ゲームをプレイしたいって思ってました。

それを「叶えられる」ってわかったら、頑張ってみてもいいかなって思うんですよ。

なんだろうこの説得力。

頑張って働けばお金は手に入って、きちんと貯めれば貯金もできて、それで好きな世界を作っていくの、シンプルですけど、楽しいですよね。そういう人生にしていきたいから、ゆくゆくは本当にレトロなゲームセンターの店長をやっていたいんですよ。絶対に楽しいはずですから。

「好きな世界を自分で作っていく」って、夢があるなあ……。例えばランボルギーニを買った1,000万円が戻ってきたとしたら、車をもう1台買おうとかは思わないんですか?

思わないですね。一度叶った夢ですから。今度はアーケード機を買うでしょうし、それも叶ったら、また別のことに使うと思いますよ。

おわりに

44歳の夢見る少年っぷり、ご覧いただけただろうか。

とりさんにとっては、お小遣いを貯めてプラモデルを買ったあの日の感覚がずっと続いているようなものなのだろう。

ひとつ夢を叶えては、また次の夢を見つけて進む。そんな挑戦を繰り返すとりさんの背中を見て、僕も「子どものころに描いた夢」をもう一度思い出してみようと思った。

とりさんの背中は今日も語る。

「夢も服も、ぴったりサイズより、一回り大きいものを」


~The End~

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