運転免許は一部だけ返納できる?手続きの場所や必要なものを徹底解説

ガイド:渡辺 剛志

高齢者ドライバーによる事故が多発している中、運転免許を自主的に返納する人が増えています。しかし、複数の運転免許を所持している場合、一度にすべてを返納する必要はありません。すべてを返納すると運転経歴証明書が発行されますが、必要な運転免許だけを残し、一部だけを返納することもできます。この記事では、運転免許の一部だけを返納する方法を詳しく解説します。手続きの場所や必要なものも併せて解説するので、この記事を読めば一部返納がスムーズに行えます。

内閣府による調査「令和元年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況」(※)によると、75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故は2009年(平成21年)から2019年(令和元年)まで毎年400件台を超えています。事故を起こした要因で最も多いのは、ハンドル操作の誤りやブレーキとアクセルの踏み間違いなどの操作ミスです。

現在は、運転免許を自主的に返納できる制度があります。運転に不安を覚えたときは、事故を起こすリスクを考慮して自主的に返納するのも選択肢のひとつです。

運転免許には、普通自動車免許や原動機付自転車免許などの複数の種類があります。ドライバーの中には、一部の運転免許だけを残して返納したいと考えている人も多いのではないでしょうか。この記事では、運転免許の一部だけを返納する方法をわかりやすく解説します。

※出典:内閣府「令和元年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況」特集-第37図 75歳以上・80歳以上の高齢運転者による死亡事故件数の推移

運転免許の自主返納制度とは

1998年(平成10年)4月の道路交通法の改正以降、運転免許の自主返納制度が施行されています。制度が導入された背景には、加齢による身体機能や認知機能の低下などで、自主的に運転免許を返納したいという声があったからです。

自主返納制度を利用すれば、ドライバーの自由なタイミングで運転免許を返納できるようになりました。また、日本では高齢社会に伴って高齢ドライバーの免許制度も変化しています。更新区分によって異なりますが、運転免許の有効期限は3年または5年です。

現在は71歳以上の誕生日以降に運転免許を更新する場合、有効期限が一律3年に変更されています。さらに70歳以上で運転免許を更新する際には高齢者講習、75歳以上は認知機能検査の実施が義務づけられています。

高齢者講習では実際に運転する内容も含まれていますが、あくまでも講習なので合否判定はありません。指導員からは、運転状況に応じて適切なアドバイスが受けられます。ただし、認知機能検査は結果次第で運転免許の停止または取消しになることがあります。

運転免許の一部だけを返納できるのか

運転免許には複数の種類があるため、ドライバーによってはすべてを返納すると日々の生活に支障が出る人もいるでしょう。ここでは、自主返納制度で運転免許の一部だけを返納できるのかを解説します。

全部または一部の取消しが可能

自主返納制度では、保有している運転免許の全部または一部の取消しができます。例えば、普通自動車免許と原動機付自転車免許を保有しているドライバーが、普通自動車免許だけを返納することも可能です。

ただし、一度返納した運転免許は元に戻せないので注意が必要です。返納した後に運転免許が必要になった場合は、基本的に再度自動車学校や教習所に通って試験を受けなければなりません。そのため、運転免許を返納するときには必要か不要かを十分に検討するようにしましょう。

一部だけを返納する手続きは2種類

運転免許の一部だけを返納する手続きには、次の2種類があります。

・一部取消し申請
・一部取消しと下位免許の取得申請

運転免許を一部だけ返納する前に手続きの種類を理解し、必要なものまで取り消さないように注意しましょう。

【一部取消し申請】
保有している運転免許の一部だけを取り消す場合は、一部取消し申請の手続きが必要です。一部取消し申請は、複数保有している運転免許の一部だけを返納できる手続きになります。例えば、「大型自動車免許は不要だけど普通自動車免許を保有し続けたい」という場合です。

取消しできる運転免許の種類は次の通りです。

・大型自動車免許
・中型自動車免許
・準中型自動車免許
・普通自動車免許
・大型特殊自動車免許
・大型自動二輪車免許
・普通自動二輪車免許
・大型自動車第二種免許
・中型自動車第二種免許
・普通自動車第二種免許
・大型特殊自動車第二種免許
・牽引第二種免許

ただし、運転免許の停止または取消し処分を受けている場合は一部取消し申請ができません。

【一部取消しと下位免許の取得申請】
運転免許の多くは、取得すると複数の免許が付帯されています。普通自動車免許を取得すると、小型特殊自動車や原動機付自転車の運転もできます。「普通自動車免許は不要だけど原動機付自転車には乗り続けたい」という場合に必要な手続きは、一部取消しと下位免許の取得申請です。

申請できる代表的な免許の種類と残せる免許の種類は、次の通りです。

免許の種類 残せる免許の種類
普通自動車免許 ・小型特殊自動車
・原動機付自転車
中型自動車免許 ・準中型自動車免許
・普通自動車免許
・小型特殊自動車免許
・原動機付自転車免許
大型自動車免許 ・中型自動車免許
・準中型自動車免許
・普通自動車免許
・小型特殊自動車免許
・原動機付自転車免許

普通自動車免許を保有している場合、運転免許証の種類欄には「普通」と記載されています。一部取消しと下位免許の取得申請で普通自動車免許を取り消すと、「普通」から「原付」の表記に変わります。

運転免許を一部返納する方法

運転免許の一部を返納する際には、特定の場所で手続きが必要です。ここでは、手続きできる場所や必要なものを解説します。

手続きできる場所

運転免許の一部返納手続きは、各都道府県の運転免許更新センターや一部の警察署で行えます。すべての運転免許センターや警察署で手続きができるとは限らないため、事前に各都道府県警察の公式ウェブサイトをチェックしておきましょう。

また、受付時間は場所によって異なります。例えば東京都の運転免許更新センターでは、平日の午前8時30分から午後4時30分まで受け付けています。ただし、土日や祝日、年末年始は受付していません。

手続きに必要なもの

運転免許の一部取消し手続きでは、運転免許証と交付手数料が必要です。また、何らかの事情で本人が手続きを行えない場合は、代理人による申請も可能です。

【運転免許証】
運転免許の一部取消しでは種類欄の表記を変更する必要があるため、運転免許証を持参しましょう。手続きする場所によっては、規定に沿った写真1枚や筆記用具の持参を求められることがあります。

また、運転免許証の記載事項に変更がある場合は、住民票や健康保険証などの身分証明書類の準備が必要です。必要なものは各都道府県警察の公式ウェブサイトに記載されているため、事前に確認しておきましょう。

【交付手数料】
運転免許の一部返納手続きを終えた後は、新しい運転免許証が交付されるため2,050円の交付手数料がかかります。また、一部取消しと下位免許の取得申請を行う場合は、種目ごとに200円の手数料が必要です。

【代理人が手続きする場合】
病気や怪我などで本人が手続きできない場合は、代理人に申請を依頼することもできます。代理人が手続きする際には、申請者本人の運転免許証のほかに次のものが必要です。

・申請者本人の写真1枚
・申請者本人と代理人の関係を示す書類
・確認書および誓約書
・代理人本人の確認書類

代理人による手続きに必要なものは各都道府県で異なるため、事前に警察のウェブサイトで確認しましょう。

一部取消しでは運転経歴証明書は交付されない

運転免許をすべて返納して申請すると、運転経歴証明書が交付されます。運転経歴証明書とは過去5年間の運転経歴を証明する書類で、2012年(平成24年)4月1日以降は運転免許証と同様に本人確認書類として利用できるようになりました。

運転経歴証明書を取得すると、公共交通機関や街のお店などで割引が受けられる特典が利用できます。ただし、一部の運転免許のみを取り消す場合は引き続き何らかの運転免許を保有するため、運転経歴証明書は交付されません。

各都道府県が用意している免許返納による特典は、高齢運転者支援サイトに掲載されています。運転免許をすべて返納するか迷っているドライバーは、特典内容を確認してから決めるのも選択肢のひとつです。

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ガイドプロフィール
渡辺 剛志(わたなべ・つよし)
株式会社ウェブクルー 自動車関連サイト 営業担当

株式会社ウェブクルーが運営する自動車関連サイトの営業担当者。新車・中古車を問わず、マーケット動向に深い知見を持つ。

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