車の買替え時期はいつ!? 中古車の売却・購入と走行距離の関係

ガイド:山田 正昭

愛車を売りたいとき、中古車を購入するとき、とても重要なのが走行距離です。「走行距離がどのくらいになったら売り時なの?」「走行距離が長い中古車は買わない方がいい?」こういった疑問を持っている人も多いでしょう。実は、車の状態、つまり傷み具合と走行距離は、必ずしも比例するわけではありません。しかし、それでも走行距離が中古車の価値を大きく左右するのは事実。中古車を賢く売買するために、きちんと理解しておきましょう。

中古車を売買するときに見るべき最も重要な項目のひとつとして「走行距離」が挙げられます。「走行距離が短い車のほうが状態も良い」と考えられがちですか、果たして本当にそうなのでしょうか。詳しく解説していきます。

そもそも「走行距離」ってどこを見ればいいの?

走行距離とはまさに読んで字のごとく、車が走った距離。通常、自動車には走行距離を示すメーターがふたつあります。ひとつはいつでもボタンを押してゼロに戻せる「トリップメーター」。ガソリンを入れたときにゼロにする人が多いでしょう。もうひとつが「オドメーター」。こちらはリセットすることができず、基本的にその車が製造されたときからの積算の走行距離を表示します。

トリップメーターとオドメーターはスピードメーターの近くに表示されていることが多く、最近では液晶ディスプレイなどのデジタル表示が主流。そのためエンジンをオンにしなければ表示されませんし、所定の操作をしないとオドメーターが表示されない車も多くなっています。

トリップメーターとオドメーター

もし愛車の売却や購入を考えているなら、走行距離は最も気にしなければならないポイントのひとつです。愛車を売却するのに走行距離がわからないなら、取扱説明書を読み直して確認しておきましょう。確認したところで減らせるわけではないのですが、売却時に走行距離も知らないようでは軽く見られてしまいますし、価格交渉もできません。

中古車の購入時には、走行距離はプライスカードに書いてありますので簡単に確認できます。それをどの程度気にするべきかは、これから説明していきましょう。

走行距離の限界はどれくらい? 買替え時期の目安は?

車は走行距離が増えるほど傷んでいき、やがて寿命を迎えるもの…そう思っている人が多いでしょう。もちろん大まかな話としてそれは正しいのですが、実際のところ、車の傷みは必ずしも走行距離に比例するわけではありません。しっかりとメンテナンスをしていたかどうかが重要ですし、郊外の交通量の少ない道ばかりを走っていた車と、渋滞の道ばかり走っていた車では、同じ走行距離でも傷み方がまったく違います。

そのため、「走行距離が何万キロになったら寿命」といった目安はありません。また、ある程度走行距離が増えると故障が増えるので売り時だとか、走行距離の多い中古車は壊れやすいので買わない方がいいといったこともありません。世の中には、数万キロでエンジンなどが致命的な故障を起こして廃車になる車もあれば、100万キロを超えて走り続けている車もあります。

とはいえ、どのようにメンテナンスされていたか、渋滞路ばかり走っていたかどうかは記録が残りません。ですから、現実には走行距離を判断の目安にせざるを得ず、中古車市場では、売却でも販売でも走行距離が、車両の程度を判断する大きな材料になっています。

さらに言えば、現在の中古車市場は走行距離が過剰に重視されすぎる傾向があります。実際には程度のいい車両でも、走行距離が多いと消費者に敬遠され、価格を下げないと売れません。その結果、極端に言えば中古車の価格は車両の程度と関係なく、走行距離に左右されるという状況があります。

車の査定や売却に影響し始める走行距離はどれくらいから?

このようなことを踏まえて、まず愛車の売り時を走行距離から考えるとどうなるでしょう。当然ながら、走行距離が多いほど査定には不利になります。査定をする人はプロですので、走行距離に惑わされずに車両の程度を見極めることができるのですが、それがそのまま査定額に反映されることはありません。どんなに程度がいい車両でも、走行距離が多ければ販売時に価格を低くしないと売れないので、査定額も低くなります。

では、どのくらい走っていると査定が低くなってしまうのでしょうか。大まかなひとつの目安として、“1年に1万キロ”という数字があります。たとえば新車から3年経過した車両では、3万キロ以内なら通常か少ない走行距離。3万キロを超えると、多走行と判断されるということです。

もうひとつの目安は10万キロという大きな区切りとなる数字です。車は、走行距離が9万キロだと程度良好で、10万キロを超えると急に壊れやすくなるということはありません。しかし、中古車を購入する人にとって、10万キロを超えると印象が悪くなりがちです。また、査定をする人は、「10万キロを超えていれば低い査定でもオーナーは納得してくれるだろう」「少なくとも交渉材料になるだろう」と考えます。これが、10万キロを超えると査定額が厳しくなる理由です。

中古車購入時に知っておくべき走行距離のポイント

では、中古車を購入するときはどうでしょう。非常に状態がいいけれど、多走行なので価格が安い中古車。逆に、状態が悪いのに、走行距離が短いので高めの中古車。どちらも中古車市場にはたくさんあります。

しかし、素人には、それを見極めるのは非常に難しいと言えます。なんとか見極めて掘り出し物を探しだそうとするよりも、知っておくべきことがあります。それは、多走行の中古車は、多走行なりに「仕上げ」られるということ。

「仕上げ」とはどういうことでしょう。“中古車屋さんは中古車を仕入れてそのまま販売する”と思っている人がいるかもしれませんが、そうではありません。仕入れた中古車は“素材”と考え、点検整備や板金補修、クリーニングなど、手間ひまをかけて商品といえるレベルまで仕上げてから販売するのです。

仕上げにどのくらいの手間と費用をかけるかは、中古車店によって大きく異なります。手間をかけて仕上げ、保証も付けることで品質と安心を強調するお店もあれば、仕上げコストを抑えて価格メリットを最大限にアピールするお店もあります。

ちょっと説明が長くなりましたが、前者の品質本位のお店は、そもそも多走行車を仕入れません。多走行車はもっぱら、後者の価格重視のお店に流れていきます。ですから、多走行車は走行距離が多いことに加えて、コストを抑えた仕上げがされているということになります。

もちろん、価格重視のお店の中古車が悪いわけではありません。仕上げコストを抑えているといっても、内外装のキズや汚れがそのままになっている場合などは、見た目は悪くても機能的には問題ありません。安ければ多少のキズや汚れは問題なし、と考えるかどうかは、愛車に対する考え方や好みの問題と言えます。

中古車の走行距離って信用しても大丈夫?

「中古車の走行距離はごまかされているのでは」と疑う人もいるかもしれません。残念ながら、それを完全に否定するのは難しいのが現実で、中古車業界では過去に何度も「メーター戻し」が問題となっています。ただし、現在ではこのような不正は極めて少なくなっているはずです。

なぜなら、現在では不正防止のため、車検証に走行距離が記載されるようになったからです。車検時の走行距離を車検証に記載してあるので、それよりも少ない距離に戻してもすぐにばれてしまう、というわけです。実は1年ほど前、この対策すら巧みにすり抜けてメーター戻しをする悪質な業者が逮捕されたのですが、それを機に現在ではさらに対策が強化されました。

従来は過去2回分の車検時の走行距離が車検証に記載されていたのですが、前述の悪質な業者はメーターを戻したあと、同じ日に2回車検を受けたのです。意外だと思うかもしれませんが、走行距離が少なくなっていることは車検時には問題にされません。メーターが故障して交換することもありえるからです。また、1日に2回車検を受けることは非常に不自然ですが、制度上は可能です。

例えば、現在の走行距離が12万キロとします。メーターを5万キロに戻し、1回車検を受けると、車検証には2年前の走行距離、例えば10万キロ、そして今回の車検時の走行距離5万キロが記載され、走行距離が不自然であることがすぐにわかります。しかし、もう一度車検を受けると、前々回の車検時の10万キロという記載がなくなり、多走行であった事実が隠蔽されてしまうのです。

こうした悪質な手口を防ぐため、2017年1月からは「過去の最大の走行距離」が車検証に常に記載されることになりました。車検のたびに走行距離が増えていれば従来通りの記載ですが、走行距離が少なくなった場合でも、その前の走行距離は消えずに必ず記載されるのです。この最新の対策をすり抜けた悪質業者がいるという話は、今のところありません。絶対とは言えませんが、現在では車検証さえ確認しておけば、メーター戻しにだまされることはないでしょう。

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ガイドプロフィール
山田 正昭(やまだ・まさあき)
自動車・バイク・ITジャーナリスト/YouTuber

自動車雑誌、バイク雑誌の編集を経て、フリーランスとして独立。Webに活躍の場を移し、多数のサイトで執筆活動を展開中。カーナビやデジタルガジェットのインプレッション記事も得意とする。最近はYouTubeで車やバイクのレストア・整備・修理などを公開中(まーさんガレージ:https://www.youtube.com/user/yamada911/)。

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