人を車で死亡させてしまったらどうなる?
逮捕から起訴までの23日間と裁判の流れ
2015年(平成27年)に起きた交通死亡事故の発生件数は、4,117件(警察庁交通局交通企画課調べ)。交通死亡事故の件数は年々減ってきていますが、今もなお約2時間に1件の割合で交通死亡事故が発生しています。
出典:総務省統計局ホームページ 交通局交通企画課作成資料「平成27年中の交通事故死者数について」死亡事故を起こすことは、文字通り人の命を奪ってしまうこと。そして、相手の命を奪ってしまった責任を負います。しかし事故後の対応を間違えてしまうと、その責任が重くなることもあります。
この記事では、交通死亡事故の加害者になってしまった場合、どのように裁判が行われ、判決が下るのか。そして、遺族への賠償金額はどのように決められるのかを、交通事故の裁判に詳しい石上法律事務所代表の石上晴康弁護士に伺いました。

1948年2月28日生まれ。神奈川県横浜市出身。栄光学園高校、東大法学部卒業。サラリーマン経験(日本輸出入銀行)を経て1981年弁護士登録。1984年石上法律事務所開設。
罪状はどのように決まるのか? 刑事裁判の流れ
交通死亡事故で加害者になってしまった場合に課せられる罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条に規定されています。それは、「過失運転致死傷罪」と呼ばれ、「7年以下の懲役」「7年以下の禁固」「100万円以下の罰金」のいずれかが課せられます。
また、以下のような状況で死亡事故を起こしてしまった場合、同法第2条及び第3条違反(危険運転致死傷罪)となり、より重い刑罰が課せられます。また、無免許運転の場合には、同法第6条により、さらに重い刑罰が課される場合があります。
- ・飲酒や薬物で酔った状態
- ・制御困難な速度での走行
- ・無免許運転
- ・信号無視などの危険な運転
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(一部を引用)
・アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為(第2条1号)
・その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為(第2条2号)
・その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為(第2条3号)
・人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為(第2条4号)
・赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為(第2条5号)
・通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為(第2条6号)
・アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態(第3条1項)
・自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態(第3条2項)
この刑罰を決めるのが、刑事裁判です。交通死亡事故を起こしてしまった場合には、どのような流れで判決が決まるのでしょうか。
石上晴康先生「交通死亡事故を起こしてしまった場合、逮捕されてから警察の取り調べ等を受け、その後48時間以内に検察庁に引き渡されることになります。これが『送検』です。送検された加害者は24時間以内に勾留(※1)されるかどうかが決まります。なお、逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断された場合には、逮捕されず、在宅のまま、捜査機関からの呼び出しに応じて取り調べを受けることもあります」
※1 勾留……罪を犯したことが疑われ、かつ、証拠を隠滅したり逃亡したりするおそれがある人物の身柄を拘束すること。通常、加害者は、留置場あるいは拘置所で身柄を拘束される。
──逮捕直後からごく短い期間で勾留になるかどうかが決まるのですね。もし死亡事故を起こしてしまい、その場から逃げてしまったらどうなるのでしょうか。
「ひき逃げをした場合は、さらに罪が加わり、懲役期間や罰金が重くなります(※2)。もし事故を起こしてしまった場合は被害者を救護し、逃げようとは考えないことです」
※2 事故を起こしてしまった加害者には、被害者を救護し、事故を警察に報告する義務がある。
道路交通法第72条1項前段 交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。
同法第117条 車両等(軽車両を除く。以下この項において同じ。)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があった場合において、第72条(交通事故の場合の措置)第1項前段の規定に違反したときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2 前項の場合において、同項の人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
──事故を起こしてしまった場合は、隠蔽しようとしないことが重要なのですね。検察庁に送検され、勾留された加害者はその後どうなるのでしょうか。
「勾留が決まった加害者は、警察署の留置場などに10日間勾留されます。この間、加害者は身柄を拘束され外出ができません。加害者の主張内容によっては、弁護士以外の人物と一切面会できないこともありますね(「接見禁止」という)。」
「加害者には、10日間の勾留期間が過ぎた時点で『勾留延長』『不起訴(※3)・起訴猶予(※4)』『略式起訴(※5)』『起訴(※6)』のいずれかの処分が下ります。10日間の勾留期間で処分が決まらず、さらなる取り調べが必要な場合、10日間追加で身柄を拘束されて、その後処分が決まります(勾留延長)。『起訴』になった場合は、そこから公判手続が始まります」
※3 不起訴……検察官が起訴をしないこと。被疑者が罪を犯していなかった場合、犯罪を成立させる決定的な証拠がない場合、など。
※4 起訴猶予……証拠が十分でも、示談が成立している。又は年齢、性格、境遇などを考慮して起訴を必要としない不起訴処分。
※5 略式起訴……刑事裁判を簡略化して、手続きを迅速に済ませる方法。公判審理ではなく罰金で済ませる手続き。
※6 起訴……検察官が訴えを起こすこと。
──逮捕から裁判に至るまで、最長で23日間……。とても長い期間になりますね。逮捕された直後から裁判に至るまでに、弁護士の先生に担当してもらえるタイミングはいつになるのでしょうか。
「弁護人は、国選弁護人か私選弁護人が担当することになります。国選弁護人は勾留されたあとから事件を担当し、私選弁護人ならば逮捕直後から弁護活動を行うことができます。」
「私選弁護人の場合、逮捕直後から事件の状況を見ながら不起訴や執行猶予を獲得するために動くこともできるので、知り合いの弁護士がいる場合、万が一の事故に備えて名刺を財布などに入れておいてもいいかもしれません」
──起訴が決まった場合、裁判はどのように行われるのでしょうか。
「裁判は『公判』と呼ばれ、証拠調べ手続きの中で、証人尋問等が行われたあと、加害者は裁判所で検察官と弁護人から質問されます(被告人質問)。その後、検察官からの論告・求刑、弁護人からの弁論などを経て最終的に判決が下されます。判決は、禁固刑(※7)、懲役刑などの実刑判決か、執行猶予(※8)付き判決の場合もあるでしょう」
※7 禁固刑……刑務所に入れられるが、労働の義務はない。懲役刑よりも軽い刑とされている。ただし、実際には何もすることのない拘禁生活なので、それはそれで苦しい。
※8 執行猶予……執行猶予期間中に新しい事件を起こさなければ、刑罰が免除される制度。例えば、懲役2年、執行猶予4年の場合、4年の間に事件を起こさなければ、懲役刑が免除される。
交通死亡事故を起こしてしまうと、最長で23日間身柄を拘束され、その間は外部への連絡はほとんどできません。さらに刑事責任だけでなく、被害者の遺族へ賠償金を支払う民事責任も発生します。
刑事罰だけでなく、賠償金を支払う義務も……
交通死亡事故の賠償金は高額になります。交通死亡事故の場合、その額は数千万円から数億円になることも。ここでは賠償金の金額がどのように決められるのか、加害者にはどれだけの支払い義務があるのかを伺います。
──交通死亡事故を起こしてしまうと、多額の賠償金が発生してしまうと思うのですが、その金額はどのように決められているのでしょうか。
「遺族に払う賠償金は、加害者に過失があるかないか、被害者に過失があるかないか、被害者がこれから得られるであろう収入などを検討して決められます。これは示談の結果や民事裁判の結果によって上下しますが、賠償金の相場は専用の数式があって、ある程度決められているんですよ」
──請求金額は時に数億円になる場合もあると思うのですが、賠償金額が支払い能力を超えた場合、例えば支払い中に自己破産した場合などはどうなるのでしょうか。
「自己破産をしたとしても、支払いの義務は残る場合があります。また、加害者が支払わず、加害者が亡くなった場合、加害者の家族が相続することになるため、加害者の家族に賠償金が請求されることもあります」
「自動車を保有する場合は自賠責保険に加入する必要がありますが、交通死亡事故を起こした場合、賠償金が高額になるため、自賠責だけでは支払いきれない場合もあります。やはり、車を運転する人は任意保険に加入しておいたほうが安心ですね」
事故が起きて悲しむのは遺族だけではない
最近、スマートフォン向けゲーム『ポケモンGO』が流行っていますが、ポケモンに限らず、スマートフォンやカーナビなどを運転中に操作することは道路交通法第71条5の5で禁止されています。もし、操作に夢中になって事故を起こしてしまい、相手を死亡させてしまったら、どのような結末が考えられるでしょうか。
例えば、2008年に宮崎県で発生した事故では、車の運転手が携帯電話の操作に気を取られ、路上に横たわっていた男性をひき逃げしました。被害者は病院に運ばれるも死亡。加害者には懲役2年の判決が下りました。
また、2014年には、アルコールの影響で正常な運転が困難な状態にも関わらず、スマートフォンの操作に夢中になり、前方を歩いていた4名の歩行者をはねてしまったという事故が北海道で発生。被害者のうち3名は死亡し、加害者には、懲役22年の判決が下っています。
交通事故が起こる確率をゼロにすることは不可能です。もし事故を起こしてしまったら、被害者やその家族だけでなく、自分の周りの人も悲しむことになります。普段から安全運転を心がけ、事故を起こさないようにしたいものです。
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車業界に長くいた石川だからこそ、一般の人が知らないすごい裏ワザを知っているのかもしれません。
そこで、詳しい話を聞いてみることにしました。

大手中古車販売業者の本社で事業企画に携わったあと、中古のスポーツカー専門販売店「GTNET」の仕入れ責任者を担当。その後、LIGへ移りセールス課のマネージャーに就任、現在に至る。自動車業界には10年以上いるため、車の市場動向に詳しい。





