DCT vs. CVT どちらがより低燃費?
燃費・環境性能をめぐる日欧トランスミッション対決

ガイド:山田 正昭

ヨーロッパの「DCT(デュアルクラッチトランスミッション)」、日本の「CVT(無段変速機)」。まったく異なるAT車のトランスミッションが、ともに低燃費を売り物にして競い合っています。DCTは、キビキビした走りを重視するヨーロッパの嗜好に合わせながら低燃費を実現。一方、CVTは国産小型車を中心に普及しており、さらなる進化を続けています。
エリアによる嗜好特性やマーケットの車種構成に合わせて、開発競争を繰り広げてきたDCTとCVTですが、最近ではDCTがやや優勢にあると言えそうです。なぜなら、日本の小型車でもDCTが採用され始めているから。時代の要請である、低燃費や環境負荷低減の実現は、各メーカーに技術的チャレンジを求め、技術革新・競争を加速させています。

「AT(オートマチックトランスミッション)」の形式である「DCT(デュアルクラッチトランスミッション)」と「CVT(無段変速機)」。どちらも低燃費が特徴ですが、どのような違いがあるのでしょうか。

日本で小型車を中心に普及する「CVT」

現在、日本で販売されている自動車の約98%は「AT(オートマチックトランスミッション)」。つまり、自分でギアチェンジをする必要がない自動車です。もはやAT車が普通であり、「MT(マニュアルトランスミッション)」のほうが特殊な存在と言えるかもしれません。ATにはいくつかの方式が混在し、日欧で技術を競い合っているのをご存じでしょうか。

ATと言えば「トルコン(トルクコンバータ)」という言葉を思い出す人も多いでしょう。トルクコンバータと遊星歯車からなる「ステップAT」は世界中で数多く採用されている、最も一般的なATです。しかし、日本では小型車を中心に「CVT(無段変速機)」というタイプの採用例が増えています。

CVTはベルトを使用して無段変速を実現したATで、変速がスムーズで低燃費なのが特徴。小型・軽量であるため、FFのコンパクトカーにマッチすることも利点です。日本が開発した技術ではありませんが、この技術を育ててきたのは日本だと言えるでしょう。

初期にはスバルなどの軽自動車に採用され、ホンダも積極的にCVTを改良し、主力モデルに搭載してきました。初期のCVTは、「発進がスムーズでない」「加速が鈍い」といった弱点もありましたが、今ではほとんど解消されています。

「MT」を進化させたヨーロッパの「DCT」

一方、ヨーロッパでは、日本とまったく別のAT方式が古くから採用されています。基本構造はMTのままで、クラッチやギアチェンジの操作を自動化した「セミAT」と言われるものです。古くはポルシェが1960年代に実用化した「スポルトマチック」があり、わりと新しいものとしてアルファロメオの「セレスピード」、フィアットの「デュアロジック」、フェラーリの「F1マチック」などがあります。

これらは、「ロボットMT」「2ペダルMT」とも呼ばれ、クラッチ操作が自動化されたトランスミッションです。ギアチェンジは自動化されていないか、されていても付加的な機能にとどまっています。自動化という意味ではステップATより劣るのですが、ヨーロッパでは伝統的にMTの人気が非常に高いため、その良さを損なわないATとしてセミATが採用されてきました。

MTの良さは、キビキビと走って燃費がよく、コンパクトカーにも無理なく搭載できるように小型軽量であること。ヨーロッパのメーカーは、キビキビした走りに特にこだわります。燃費と小型化の面ではセミATに劣らない「CVT(無段変速機)」がヨーロッパで普及しなかったのも、それが原因。CVTは変速がスムーズである反面、ダイレクトな走行感覚を味わえないのです。

しかし、セミATには大きな弱点がありました。ギアチェンジを自動化することはできるのですが、その際の変速ショックが大きく、走りのスムーズさではCVTやステップATにまったく敵わなかったのです。

そのため、ヨーロッパでも高級車や大衆車ではステップATが多数を占めるようになり、セミATはスポーティさを売り物にする一部モデルに限定されるようになっていきます。ところが数年前、セミATの逆転ホームランとも言うべき新技術が登場しました。それが「DCT(デュアルクラッチトランスミッション)」です。

DCTは、セミATを2基、合体させたような構造。クラッチが2組あり、2台のセミATを連携させることで、ステップAT並みのスムーズなギアチェンジを可能にしました。しかもキビキビした走りにはさらに磨きがかかり、燃費性能にも優れています。

「CVT」の技術を磨きながら「DCT」も取り入れる日本メーカー

今、日欧の自動車メーカーは「DCT(デュアルクラッチトランスミッション)」と「CVT(無段変速機)」の性能を競い合っています。

DCTはコンパクトカーからスーパーカーまで幅広く搭載されており、どんなモデル、どんなエンジンにも対応できることを見せつけています。一方、CVTは今も技術の進歩が続いており、最近では副変速機を追加することでさらに燃費性能を向上させました。

しかし、現在の状況は、DCTがやや優勢といえるかもしれません。というのも、日本車が一部のモデルにDCTを採用し始めているからです。代表的な例がホンダ。これまでは、看板モデルの「フィット」に自慢の自社製CVTを搭載してきたホンダですが、新型「フィット ハイブリッド」にはDCTを採用しました。「フィット ハイブリッド」は燃費性能世界一を絶対条件として開発されたモデル。ホンダはCVTよりもDCTのほうが低燃費だと判断したということです。

日欧のメーカーは、低燃費エンジンの分野でも「ハイブリッド」と「直噴ターボ」という異なる技術で競い合っています。自動車のように、技術的に成熟した商品でこれほど技術に競合が発生するのはとても珍しいこと。

これは、時代の要請である「低燃費」「環境負荷の低減」の実現が非常に難しいという証拠でしょう。「低燃費」「環境負荷の低減」という高いハードルをクリアするために、各メーカーが果敢に技術的チャレンジを続けたことが、このようなエキサイティングな状況を生んだと言えます。

2014年12月15日掲載

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ガイドプロフィール
山田 正昭(やまだ・まさあき)
自動車・バイク・ITジャーナリスト/YouTuber

自動車雑誌、バイク雑誌の編集を経て、フリーランスとして独立。Webに活躍の場を移し、多数のサイトで執筆活動を展開中。カーナビやデジタルガジェットのインプレッション記事も得意とする。最近はYouTubeで車やバイクのレストア・整備・修理などを公開中(まーさんガレージ:https://www.youtube.com/user/yamada911/)。

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