今こそ「ディーゼルエンジン」に注目!
環境に悪影響を及ぼす嫌われ者からエコな優等生へ

ガイド:山田 正昭

かつては嫌われ者だったディーゼルエンジンが、クリーンに生まれ変わって人気を集めています。もともと、ディーゼルエンジンはCO2排出量が少なく、環境に良いエンジン。嫌われる原因だった黒煙を出さないように、圧縮比を下げる改良がされたことで、環境に良い優等生になりました。ディーゼルエンジンは低回転で力強いトルクを発生するため、日常的な速度域でもグイグイと加速する小気味良い走りが楽しめます。
さらに、エンジンが軽量かつコンパクトになったことでハンドリング性能も向上し、ディーゼルエンジンでスポーティなモデルを作ることも可能に。2015年2月に登場したばかりのマツダの新型車「CX-3」はディーゼルエンジンのみのラインアップとなるなど、ディーゼルの新時代が到来しています。

一昔前までは悪者扱いされていたディーゼルエンジンが、環境にやさしいエコ技術として華麗な転身を遂げました。技術の進歩によってどのような改良が加えられたのか、解説していきます。

本当は環境にいい「ディーゼルエンジン」

ディーゼルエンジンと言えば、黒い煙をもくもくと吐き出し、臭くてうるさくてガラガラブルブルと震えるーーかつてはそんなイメージでした。しかしながら、ディーゼルエンジンは悪いところだけではありません。最大の美点はやはり“燃費が良い”ということ。そして、燃費が良いということは、“環境に良い”ということにも繋がります。

“環境に良い”という言葉は曖昧ですが、今、環境問題で最も重視されているのはCO2(二酸化炭素)の削減です。自動車の場合、燃料をエンジンで燃やすことでCO2が発生してしまいます。つまり、燃費の良いエンジンほどCO2排出量が少なく、環境に良いということです。

では、なぜディーゼルエンジンの燃費がいいかというと、熱効率の高さがその秘密。熱効率とは、燃料が持っているエネルギーのうち、どれくらいを有効利用しているかということ。ガソリンエンジンの場合、熱効率はだいたい30%前後です。つまり、ガソリンを燃焼させることで発生するエネルギーのうち、70%は熱や騒音として捨てられているのです。

これでは無駄が多いということで、世界中の自動車メーカーが100年にも渡って心血を注ぎ、ガソリンエンジンを改良し続けていますが、なかなか30%台から抜け出せません。ところが、ディーゼルエンジンはごくベーシックな構造でも40%程度の熱効率を達成できます。いかにディーゼルエンジンが環境に良いエンジンかがわかるでしょう。

環境への悪影響が深刻化し、日本では悪者に

日本では長いあいだ、ディーゼルエンジンはクリーンなイメージとは無縁でした。これはディーゼルエンジンが排出する黒煙のせいです。黒い煙はススとして空気を汚し、街を汚し、人間にも健康被害をもたらします。また、黒煙の中にはやはり健康被害のあるNOx(窒素酸化物)が大量に含まれています。かつてのディーゼルエンジンは「地球には優しいけれど、人間には厳しいエンジン」だったのです。

一方、ヨーロッパでは、ディーゼルエンジンは昔から環境に良いエンジンとして市民権を得ており、除け者にされたことはありません。日本では渋滞が非常に多く、CO2やNOxの排出量が増加することで人間に与える健康被害が大きくなったため、悪者として規制されてしまったのです。不幸だったのは、国による適切な規制が遅れたため、東京都など一部の自治体が独自に規制せざるを得なかったことです。そのため、自動車メーカーがすぐには対応不可能な極端な規制となってしまい、日本からディーゼルエンジンの乗用車が姿を消してしまいました。

しかし、技術の進歩が状況を変えました。「極端な規制」にも対応できるクリーンなディーゼルエンジンが生まれ、ディーゼルエンジンの乗用車が再び日本の街を走り始めたのです。

環境に良くて走りも楽しめる!新しいディーゼルエンジンがエコカーの常識を変える

ディーゼルエンジンは圧縮比が高いことが高効率の秘密なのですが、従来のエンジンは圧縮比があまりにも高すぎて燃料が不完全燃焼し、黒煙やNOxが発生。さらに不快な振動や騒音の発生要因となっていました。しかし、従来の技術では、圧縮比を下げると低温時にエンジンを始動できなくなるため、この問題を解決できなかったのです。

そこに登場したのが話題のクリーンディーゼル、マツダの「SKYACTIV-D(スカイアクティブD)」です(ページ上部に掲載)。バルブ機構を工夫することで、低温時の始動性の問題を解決し、ディーゼルエンジンとしては驚異的な低圧縮、14.0を達成しました。

これにより、黒煙やNOxを無理なく削減。騒音が減ったことで快適性が向上し、振動が減ったことでエンジンの強度を下げられるので、軽量コンパクトなエンジンになりました。さらに、従来は難しかった小排気量のディーゼルエンジンも作れるなど、いいことずくめです。

しかも、ディーゼルエンジンは低回転で力強いトルクを発生するため、日常的な速度域でもグイグイと加速する小気味良い走りが可能です。エンジンが軽量コンパクトとなったことでハンドリング性能も向上し、ディーゼルエンジンでスポーティなモデルを作れるようになりました。

従来、環境に良いエンジンはパワーが物足りないなど、ドライバーに我慢を強いる面がありました。しかし、ディーゼルなら環境に良くて走りも楽しめます。残された問題は、ガソリンエンジンに比べるとコストが少々高いことくらいです。

マツダの「SKYACTIV-D」搭載モデルは、どれも優れた環境性能が認められて、自動車取得税、自動車重量税が免税になります(ただし、自動車取得税は2017年3月31日、自動車重量税は2015年4月30日の新車登録分まで)。一時は日本から締め出されていたディーゼルエンジンがこれほど優遇されると誰が予測したでしょうか。

そして、マツダが2015年2月末に発売したコンパクトSUV「CX-3」は、なんとディーゼルエンジンのみのラインアップとなりました。華麗な転身を果たしたディーゼルエンジンの快進撃はまだまだ続きそうです。

2015年4月7日掲載

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ガイドプロフィール
山田 正昭(やまだ・まさあき)
自動車・バイク・ITジャーナリスト/YouTuber

自動車雑誌、バイク雑誌の編集を経て、フリーランスとして独立。Webに活躍の場を移し、多数のサイトで執筆活動を展開中。カーナビやデジタルガジェットのインプレッション記事も得意とする。最近はYouTubeで車やバイクのレストア・整備・修理などを公開中(まーさんガレージ:https://www.youtube.com/user/yamada911/)。

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