今の車ではありえない!? 「昔の車の常識」
あなたはどのくらい知っていますか?
自動車が発明されたのは1769年。それから今日に至るまでに、自動車は目覚ましい進化を遂げてきました。現在の自動車にはコンピュータが組み込まれ、カーナビやETC、スマートフォンと連携した多種多様なシステムなど、さまざまな機能を搭載しています。私たちドライバーも、数年ごとにマイカーを乗り替えるたびにその進化を体験してきましたが、20年前、30年前に乗っていた自動車を思い出してみると、今の自動車とのスペックの差に驚かざるを得ません。今回は、昔の自動車では当たり前だった装備や機能を振り返ってみましょう。
自動運転やETC、スマートフォンとの連携など、最新の技術を使用した車が注目されている昨今。しかし、どんどん車が進化していく一方で、昔の自動車では当たり前だったことが忘れられつつあります。若い人の中には、カセットテープデッキにiPhoneを挿入して壊してしまった人もいるとか。ここでは、20~30年前には当たり前だった自動車の常識を振り返ってみましょう。
「オート○○」なんてなかった!昔の車は、なんでも手動が当たり前
近頃はAT(オートマチック・トランスミッション)車が普及して、MT(マニュアル・トランスミッション)車が減少してしまいましたが、昔の車はすべてMTでした。MTとは、運転者自身がギアチェンジやクラッチ操作を手動で行うシステム。それ以外にも、手動で行わなければならない操作がたくさんありました。いくつか紹介していきます。
窓の開け閉めに一苦労!手動でくるくる回す「レギュレーターハンドル」
今では、パワーウィンドウのボタンを押すだけで開く自動車の窓。しかも運転席にはたいていすべての窓を操作するボタンがついているので、ドライバーが後部座席の窓を開けることも簡単です。ところが、昔の自動車は手動で窓を開けていました。各ドアに付いているハンドル(レギュレーターハンドル)をくるくると回して窓を上下させていたのです。
手動で窓を開けるにあたって特に大変だったのは、高速道路の料金所。当時はETCなど存在しないので、現金で支払う必要がありました。料金所では、窓を開けて、料金所の係員と通行料のやり取りをします。運転席が右側にある国産車ならいいのですが、左ハンドル車にひとりで乗っていると、助手席に手を伸ばして、レギュレーターハンドルをくるくる回して窓を開けてからお金を渡すという、ちょっと間抜けに映る光景がよく見られたものです。
「パワステ」がないので、ハンドル操作が激重!
もしかしたら「パワステ」という言葉は死語かもしれません。今ではパワステを搭載している車が当たり前だからです。パワステとは「パワーステアリング」の略で、ハンドルを回す力を助ける機能。かつてのハンドルは、パワーアシスト機構を介さずに車軸と直結していました。ハンドルを回す力がそのままタイヤの角度を変える力だったのです。当然、ハンドルを回すのは重くて力が必要でした。
今の自動車において軽い力でハンドルを回すことができるのは、パワステのおかげです。近年では、片手で運転するドライバーも時折目にしますが、これもパワステがあるからこそと言えるかもしれません。
「三角窓」が車内の温度を左右する!エアコン代わりの救世主
運転席や助手席のウィンドウには三角形の窓がついていました。この窓は、上下に開閉するのではなく、斜めに角度をつけて開くもので、この窓を開けたまま走行すると、外気が車内に吹き込んできます。そして、開ける角度によって風が流れる方向が変わります。
つまり、夏の暑い日に外の空気を取り入れることで、車内を涼しくするエアコンとしての役割を果たしていたのです。しかしこの三角窓は、雨が降ると雨粒が飛び込んできたり、信号待ちなどで停車する度に車内の温度が高くなるといった弱点も抱えていました。そのため、エアコンの普及に合わせて姿を消してしまったのです。
子供が助手席に座ったとき、自分の顔に風が当たるようにして「あー」と声を出し、声を振動させて遊ぶ光景もよく見られたものです。このコラムを読んでいる人の中にも、遊んだことがある人がいるのではないでしょうか。
「集中ドアロック」はない!車内からドアごとにロックが必要
今では、運転席のスイッチひとつですべてのドアをロックできる「集中ドアロック(センタードアロック)」が普通です。しかし、昔は運転席にそのようなシステムはなかったので、各ドアを内側からロックして、最後に運転席のドアに外から鍵を掛けたものです。
後部座席が半ドアのまま施錠してしまった場合は、鍵を使って運転席のドアを開け、後部座席のドアのロックを車内から解除し、ドアを閉め直してから再度ロックをかける、といったことも珍しくはありませんでした。
現代の車ではまったく見かけなくなった「昔懐かしの装備たち」
カーナビやETCなどは近年新しくできた技術で、昔はなかった装備です。一方で、今日ではまったく見かけなくなってしまった装備もあります。
時速100kmを超えると、アラームで警告!
日本の高速道路では、普通車の制限速度は時速100km(ただし、標識や標示で特に速度指定がない場合)。そのため、日本の自動車はそれを超えるスピードを出す必要がありません。つまり時速100kmを超えるとスピード違反になるのです。そこでうっかりアクセルを踏みすぎて、スピード違反になることのないように、昔の車は時速100kmを超えると、“キンコン“とアラームを鳴らして、ドライバーに教えてくれました。
ボンネット両脇の「フェンダーミラー」が主流!ドアミラーは禁止されていた
現在では、ドライバーが自動車の後方を確認するときには「バックミラー(ルームミラー)」と「ドアミラー(サイドミラー)」を見ます。ドアミラーは、自動車のドアに付いていますが、昔の自動車ではそれが禁止されていました。
その理由は、ドアミラーを見るときには顔を横に振る必要があり、前方への注意がおろそかになってしまうから。そのため、運転中でも自然に視線を向けることができるボンネットの両脇にミラーがついていました。これを「フェンダーミラー」と言います。
(写真協力:伊香保 おもちゃと人形 自動車博物館)
しかし、輸入車ではドアミラーを採用している車種が多かったため、1983年に規制が撤廃され、日本でもドアミラーが普及するようになりました。なお、タクシーではいまだにフェンダーミラーが使われています。ドアミラーだと助手席に座る乗客のほうに顔を向けてしまうことになるため、「乗客に不快感を与えないように」と配慮されているのです。
雪道用のタイヤは金属の鋲が打たれた「スパイクタイヤ」が当たり前
最近では、雪道を走るときはスタッドレスタイヤを履くのが一般的。このスタッドとは金属の鋲のことで、鋲がないタイヤなので「スタッドレスタイヤ」と言います。スタッドレスタイヤが普及し始めたのは1980年代。そのまえは、タイヤに金属の鋲(スパイク)をつけた「スパイクタイヤ」が使われていました。
しかしスパイクタイヤは、通常のアスファルトの上を走るのには向いていません。スパイクがアスファルトを削りながら走行するため、騒音がうるさいだけでなく、粉塵を撒き散らすからです。そこで、1980年代にスパイクタイヤの使用を禁止する条例が各地で制定されるようになりました。その代わりに普及したのが、スタッドレスタイヤなのです。
冬の寒い日は「チョーク」を引いてエンジン始動をサポート
「チョーク」といっても、黒板に文字を書くチョークではありません。自動車のチョークは、エンジンにガソリンと空気を送り込む管にある弁のこと。運転席には、チョークを操作するためのレバーが付いていました。このチョークのレバーを引くと、エンジンが吸入する空気の量が減り、ガソリンの比率が高まってエンジンがかかりやすくなります。
チョークを引くのは、おもに冬の寒い日にエンジンをかけるときと、エンジンを暖める「暖機」のとき。暖機をしないで走りだすと、エンストを起こしやすくなります。そこで発車の前にしばらくチョークを引いた状態でエンジンを回していたのです。現在のエンジンではガソリンと空気の配合をコンピュータで制御するので、チョークレバーが搭載されることはなくなりました。
ちなみに、チョークを引いたまま走ると、燃費が悪くなります。マフラーから黒い排気ガスが大量に出るので、後ろの車がクラクションを鳴らして教えてくれたものでした。
このように、昔と比べると今の自動車は非常に快適になったと言えます。パワーステアリングでハンドル操作も楽々。エアコン装備も当たり前で、温度も一定に保てます。スマホと連動させれば、何百曲という音楽をランダムに再生できます。昔の自動車は不便だったと言わざるを得ませんが、操作のほとんどを人間の手で行っていたこともあり、自動車に対する愛着は今よりも強かったのかもしれませんね。
2015年12月22日掲載
モーターマガジン社で「Motor Magazine」や「ホリデーオート」等の自動車雑誌やウェブサイトの副編集長、編集長を歴任。現在はフリーエディターとして、守備範囲を広げ活動中。
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