固定資産税が6倍に?強制的な修繕・解体も?
国も民間も動き出した空き家の放置対策

ガイド:下玉利 尚明

全国各地で「空き家問題」がクローズアップされています。住む人がいなくなった家が、そのまま放置されるというこの問題。国や行政も「空き家対策特別措置法」を定めるなど、本腰を入れてこの問題に取り組もうとしています。2015年5月には空き家対策特別措置法が完全施行され、行政による空き家の立入り調査や、修繕・解体に対する指導、勧告、代執行などが可能に。また、この問題には民間企業も積極的に取り組んでおり、空き家を定期的に見回り、メンテナンスを行う「空き家巡回サービス」に、さまざまな住宅・不動産関連企業が参入しています。目に見える効果が出てくるのはまだ先になりそうですが、今後の動向を注視したいところです。

全国的に問題化している空き家の放置に対して、国と民間企業が本格的に解決に乗り出しています。法改正によって私たちが受ける影響と民間ビジネスの発展、課題について紹介していきましょう。

放置された空き家のイメージ写真

「空き家放置」で強制解体?固定資産税が急増する場合も

国土交通省の資料によると、2013年の段階で、空き家は全国に約820万戸もあるそうです。しかも、人口の高齢化などを背景に今後も増加することが予想されています。空き家の放置には、「放火による火災リスクの上昇」「メンテナンス不備による倒壊の危険」「景観の悪化」など、さまざまなデメリットがあるのですが、空き家は個人の所有物であるため、状況改善が進まないのが実情でした。

しかしついに、国も本腰を入れて空き家対策に乗り出しました。それが、2015年5月26日に完全施行された「空き家対策特別措置法」。この法律によって、行政が空き家の放置に対して強制力を持って対処することができるようになったのです。

第一に行政側が行うのは空き家の実態調査や管理。調査によって、放置すると著しく「危険がある」「衛生上有害である」などと判断した空き家は、「特定空家等」に指定し、解体や修繕をするように助言や指導を行います。

助言、指導を行っても改善が見られない場合には、勧告や命令が行われ、それでも状況が改善しなければ、最終的には解体などの代執行にまで至ります。なお代執行が行われた場合の費用は空き家の所有者に請求されます。

これまでも401自治体が空家条例を制定していました(2014年10月現在)が、この法律によって空き家対策がますます進むと考えられています。

また、空き家対策特別措置法の影響によって、空き家を放置することのメリットも消えることになります。実はこれまでは、土地に家屋が建っていると、敷地の固定資産税が3分の1もしくは6分の1に減免されるという優遇措置がありました。しかし、特定空家等に指定されて勧告以上の措置を受けている場合は、減免措置の対象外となってしまうのです。

「空き家巡回サービス」に民間企業が続々参入

国や行政の動きを見て、民間企業も新たなサービスをスタートさせました。そのひとつが、住宅・不動産会社などが提供する「空き家巡回サービス」です。これは定期的に、契約している空き家を回って、家の状態を確認、必要に応じて建物や庭のメンテナンス(掃除や換気、庭の草むしりなど)を行うサービスです。

この種のサービスは、「家屋を相続したものの、近くに住んでいない」といったケースに適していると言えそうです。遠隔地にある空き家の様子を見に行くのは簡単なことではありません。代理で家の様子を見たり、メンテナンスをしてくれるのは、所有者にとっては大きなメリットと言えるでしょう。また、月額数千円から10,000円程度の料金で利用できるので、固定資産税増加や撤去費用と比べると、コスト面にも魅力があります。

空き家巡回サービスには、大東建託グループ、三井不動産リアルティグループ、大和ハウスグループ、住友不動産販売などが参入しています。また、積水ハウスは、「空き家活用サポート」という空き家管理に関する包括的なサービスを開始。住宅の修繕、解体だけでなく、賃貸、売却、土地活用といったビジネス展開までを視野に入れたコンサルティングを行っています。

跡継ぎ不明、相続人が複数…空き家管理に高いハードル

国、地方自治体、民間企業が活発な動きを見せている空き家の放置対策ですが、なかなか狙ったとおりには進んでいないようです。大きな障壁となっているのが、空き家の所有権の問題です。

例えば、住んでいた人が亡くなった結果、空き家になってしまった家屋では、誰が相続しているのかが、簡単にはわからないケースがあります。また、所有権が子供や孫の世代に移っていると、複数の人が共同で所有していることになっている場合も。

このような状況では、誰が「空き家巡回サービス」を依頼すべきなのか判然とせず、せっかくの便利なサービスも利用が促進されません。また、自治体が空き家の修繕や解体に関して指導、勧告しようとしても、それ以前に所有者を完全に特定するという作業が発生しているのです。

「空き家対策特別措置法」はまだスタートしたばかりの法律です。行政が空き家対策に強制力を持って臨めるようになったほか、固定資産税の優遇措置から除外されるなど、「空き家を放置しては損をする」という土台はできました。しかし、家を解体・撤去するという判断はそう簡単にできるものではありません。新しい法律の成果が現れるまでには、まだ時間がかかりそうです。

2015年10月20日掲載

ガイドプロフィール
下玉利 尚明(しもたまり・たかあき)
ジャーナリスト/株式会社タンクフル 代表取締役

株式会社タンクフルの代表取締役兼ジャーナリスト。引越しサイトの企画・制作に深く携わり、マーケット、流通といったマクロの側面から引越しを語ることができる稀有な存在。

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