車が遠隔操作される!?
最新システムの裏側に潜むハッキングの危険

ガイド:中尾 真二

現在、インターネットに接続された車「コネクテッドカー」の実用化が加速しています。しかし、コネクテッドカーの実用化は、ドライバーに新たなリスクを負わせることになりました。車の制御システムがハッキングされる危険性が高まっているのです。
現時点で、走行中の車がハッキングされ、重大な事故を起こすという被害は報告されていませんが、2013年のセキュリティ・カンファレンス「DEFCON(デフコン)」では、プリウスをハッキングしてハンドルやブレーキを遠隔操作するデモも行われています。今後、自動車メーカーには、エンジン制御や衝突回避ブレーキのシステムなどの開発において、ハッキング対策が求められてくるでしょう。近い将来、パソコンやスマートフォンと同様に、車にもセキュリティ対策ソフトが必要となるかもしれません。

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車の制御システムをハッキングする技術は以前から研究されてきました。この脅威は、「コネクテッドカー」の実用化により、より現実的なものとなっています。その実態を検証してみましょう。

車のブレーキが利かなくなる!?現実となった車へのハッキング

運転中の車が何者かによって遠隔操作され、ブレーキが突然、効かなくなってしまったら…。今、車の制御システムが外部からの不正侵入によって乗っ取られてしまう、つまりハッキングの危険性が現実のものとなりつつあります。

自動車ハッキングのリスクが、マスコミを通じて多くの人に知らされたのは、2013年の「DEFCON(デフコン)」がきっかけでした。DEFCON(デフコン)とは、毎年夏に米・ラスベガスで開催される情報セキュリティに関する国際会議。インターネットセキュリティの専門家、政府や軍の関係者から、TシャツにGパン姿のハッカーまでが一堂に会し、新たな攻撃手法や防御手法の研究成果が発表されます。

ある研究者がこのDEFCONで自動車のハッキングに関するデモを公開し、トヨタ「プリウス」のブレーキ、ハンドル、アクセルを任意に遠隔操作できること、フォード「エスケープ」のブレーキをコントロール不能にできることを、世界中に見せつけたのです。

車へのハッキングは、どこから侵入され、何を操作される?

実験的にとはいえ、「プリウス」や「エスケープ」といった多くの人たちに馴染みのある車をハッキングできるという事実は、世界的な話題になりました。それでは一体、車へのハッキングはどのような手法で行われたのでしょうか。

最近の車にはさまざまな小型コンピューターが搭載されており、それらが「CAN(Controller Area Network)」と呼ばれるネットワークを構成して、エンジンやブレーキ、ハンドルの制御などを行っています。CANは最新技術を搭載した自動車の中枢神経のようなものと言えるでしょう。

DEFCONでのデモでは、プリウスのCANに直接に別のケーブルを接続し、流れている制御信号を解析、偽の指示(コマンド)を送り込むという方法で行われました。つまり、いったんCANに侵入できさえすれば、エンジンを制御するECU(Engine Control Unit)、トランスミッション、サスペンション、ハンドルなどを任意に操作することが可能だということを示したのです。

このデモでは、いったんCANにケーブルを接続する必要がありました。そのため、走行中のプリウスがパソコンやスマートフォンによる遠隔操作で簡単にハッキングされてしまう可能性は、現段階では低いと言えるかもしれません。

しかし、無線通信でCANに侵入できる技術が開発されるのは時間の問題でしょう。すると、普段通り走っていたはずの車が、突然、制御不能になってしまう危険性もあるのです。

車の安全対策のひとつとしてハッキング対策が重要になる

無線通信によるハッキングの有力な経路として挙げられているのが、やはりインターネット。今、車をインターネットに接続する動き、いわゆる「コネクテッドカー」の実用化が加速しています。例えば、「ITS(高度道路情報システム)」に必要な「車車間通信」「路車間通信」や、車内で動画・音楽配信などを楽しむ「IVI(車載インフォテインメント)」もインターネット接続が前提です。

これらが「CAN」につながれば、攻撃者はインターネット経由で車を遠隔操作する手段を得ることになります。インターネットへの接続は、自動車の利便性を向上させる一方で、ハッキングのリスク拡大にもつながるのです。

「ITS」や「IVI」の普及は、時代の要請ともなっており、車へのコンピューターの搭載、インターネットへの接続は、今後ますます加速していくでしょう。自動車メーカーには、車の安全対策のひとつとして、「ハッキング対策」が求められるようになると考えられています。

また、パソコンやスマートフォンにセキュリティ対策ソフトが必要とされているように、個人レベルでの自衛策が求められる可能性も。車を運転するときには、「まずはセキュリティ対策ソフトを起動させる」という時代が来るかもしれません。

2014年7月23日掲載

ガイドプロフィール
中尾 真二(なかお・しんじ)
テクニカルライター

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンでIT関連専門書の企画・編集に携わる。2004年からフリーランス。IT、情報セキュリティをはじめ、モータースポーツ、ITS、EV、カーナビなどの自動車関連最新技術の取材・執筆も多数。

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